バラダル逮捕を元国連特使が批判

2010.3.22


 military.comによれば、最近アフガン国連特使を辞任したカイ・エイダ氏(Kai Eide)が、逮捕されたタリバン高官ムラー・アブドル・ガニ・バラダル(Mullah Abdul Ghani Baradar)と国連の和平交渉が、バラダルの逮捕によって中断したと述べました。

 エイダ氏によれば、彼と国連職員は2009年春にタリバンとの交渉を開始し、ドバイなどで顔を合わせて話し合いました。エイダ氏はパキスタンはバラダルらが政治的解決を見出す努力をしていたことを知っていたとして、逮捕を批判しました。また、国連とタリバン高官との接触は徐々に緊密となり、逮捕によってこのプロセスが途絶したと言いました。バラダルは来月3日間開催される「ジルガ(jirga)」と呼ばれる会議の最中の休戦に同意していました。パキスタン軍の広報官アザル・アッバス将軍(Gen. Athar Abbas)は、バラダルの逮捕は米軍との共同作戦であり、和平や交渉とは関係がないとし、重要な逮捕は継続的に行われていると言いました。エイダ氏は国連がクエッタ・シューラ(the Quetta Shura)の権限を持つ人々やタリバン指導層の上級の人物に会ったと言いました。「クエッタ・シューラ」はパキスタンの都市名にちなんで名づけられた、タリバンの評議会です。

 エイダ氏はバラダルの逮捕に憤っているようです。一方、ワシントン・ポストによれば、アフガニスタン政府はバラダルとの交渉を否定しています。バラダルはカルザイ大統領の部族の親類であるため、他の武装勢力よりも会談への招待を受け入れやすいとみられています。何人かのアフガン当局者は、交渉に関する類似した報告を聞いたと述べましたが、会議の日付けや場所、参加者の名前をあげることができませんでした。アフガン政府の広報官は、政府とバラダルとの間に直接の接触はなかったと述べました。カルザイ大統領は武装勢力に接触する予備的な努力において、非公式に仲介者を用いました。この記事も、バラダルや和平交渉については明確なことは分かっていないと書いています。カルザイ大統領の代理人は、しばしば親類筋を通して、タリバンの指導者や指揮官と接触してきました。カルザイ大統領は4月末か5月はじめにカブールで行う和平会議に、戦いを放棄するタリバンを招いています。

 エイダ氏とアフガン政府、パキスタン政府の言い分がかなり食い違っています。この件に関しては十分な情報が公開されておらず、真相は闇の中です。一般論としては、タリバンが和平に乗ってくるような条件はまだできあがっていません。彼らがアフガン政府と接触していても、それはごく初歩的なもので、本格的な和平交渉ではないと想像できます。しかし、我々にはごく限られた戦況しか知らされていないことを考えれば、和平交渉を完全に否定することもできません。

 なお、明日の更新は行わないか、ごく簡単なものになるかもしれませんので、ご了承下さい。


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