英国のイスラム法学者が宗教令を発布

2010.3.3


 military.comによれば、イギリスで大勢の支持者を持つムハマド・ターヘル・ウル・クァドリ師(Muhammad Tahir-ul-Qadri)がファトワ(宗教命令)を出し、アルカイダの国際的なテロリズムと自爆テロを非難しました。

 パキスタン出身のクァドリ師は、世界的な「ミンハジ・ウル・コーラン運動(the global Minhaj-ul-Quran movement)」の創始者です。600ページのファトワは「自爆テロと民間の目標への攻撃は、イスラム教によって非難されるだけでなく、犯人をイスラム教信者の外、言い換えれば不信心者に位置させる」と述べました。クァドリ師はアルカイダの活動を『新しい名前の古き悪魔』であるとし、圧倒的大多数のイギリスの若いイスラム教徒は未だ急進的になっておらず、彼の宣言を読んで考え直すと信じていると述べました。すでに完全に洗脳された者たちは耳を貸さないだろうが、その他の者たちは彼らの心に支配されることを疑うでしょう。「あなたは一晩でテロリストにはなりません。それは旅です…多くの人はすでにその道の上にいますが、まだ自爆テロ犯になってはいないのです」とクァドリ師は述べました。クァドリ師はパキスタンで自爆攻撃が増大したことに応じて、この文書を書きました。彼は、これが西欧諸国で政治家と治安当局者の注意をひくことを望んでいます。

 アルジャジーラ英語版にもこのファトワはさらに詳しく報じられ、クァドリ師の声明について、さらに詳しいことが書かれています。

「彼らは自爆攻撃を殉教活動だと主張したり、イスラムのウンマ(イスラム共同体)の英雄になることはありません。彼らは地獄の業火の英雄になり、地獄の業火へ導くのです」
「殉教が存在する余地はなく、彼らの行為は、決して、まったく、聖戦とは考えられません」
「イスラム教は、美徳、向上、高潔を促進し、危害や争いをすべて否定する平和の宗教です」
「テロリズムはテロリズムであり、暴力は暴力です。それはイスラムの教えにはなく、そのための理由、いかなる弁明や不平や言い訳は与えていません」
「これは、これまでに書かれるテロリズムに関する最初の、最も広範囲のファトワです。私はこの主題に関して、一つの石もひっくり返されないように試み、この主題に関するすべての質問について述べようとしました」
(同時多発テロ以降、いくつかのイスラム・グループがテロを非難する命令を出しましたが、クァドリ師は彼の命令が最も広範だと述べたときの言葉)

 イギリスの反過激主義のシンクタンク「キューリアム財団(The Quilliam Foundation)」は、このファトワは、おそらく最も包括的な神学上の反証だと言いました。ケンブリッジ大学のイスラム研究者ティム・ウィンター(Tim Winter)は、クァドリ師が「無神論の異端者」を宣言するのは珍しいことだけど、過激派が彼の命令に注意することはないだろうと述べました。「すでに強硬派である人たちはまったく注意を払いませんが、「浮動票投票者」、主流の法学者を尊敬する、十分に教育がなく、怒りを持つイスラム教徒はおそらく注意を払うでしょう」。

 ようやく、イスラム法学者から反アルカイダのファトワが出ました。昨日、プロパガンダの重要性を言いましたが、このファトワは、まさにそれです。おそらく、この人の影響力は主にイギリス国内に限定されるでしょうが、ロンドン連続爆弾事件があった国で出されることには意義があります(団体自体は国際的に活動しています)。ホームページを見ても、クァドリ師は穏健な宗教的信念に基づいて、望ましい形の信仰を推進していることが分かります。こうした団体の世界的な連携をサポートすることも、アルカイダを根絶するために重要です。こうした動きを促進する方法を、各国政府は考えるべきです。鳩山総理や岡田外相がヨーロッパに行く際、クァドリ師を表敬訪問するとか、日本に招くだけでも効果があります。特に、イギリス政府はクァドリ師の身辺警護を最優先すべきです。クァドリ師はまだ59歳であり、今後も強い影響力を発揮できるはずです。今後はクァドリ師とミンハジ・ウル・コーランに注意を払っていきたいと考えます。

 その他の本日の注意すべきニュースとしては、マイケル・ドンリー空軍長官(Air Force Secretary Michael Donley)が、2013年までに完成するはずだったF-35が、2015年まで完成が遅れるだろうと述べた記事があります(記事はこちら)。


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