アフガンで米軍の死者・負傷者が共に増加

2010.3.30


 military.comによれば、今年3ヶ月間のアフガニスタンにおける米軍戦死者の数は、昨年同時期の約2倍です。

 米軍当局は、犠牲者の数は30,000人のアフガンへの増派が完了すると、さらに増加すると見ています。最初の2ヶ月で57人の米兵が死亡し、これは昨年同時期の28人と比較して、100%以上の増加です。3月は今のところ、少なくとも20人が死亡しており、平均すると1日あたり0.8人で、昨年の同時期の戦死者は13人で、1日あたり0.4人でした。イギリス軍は1月に33人が死亡し、昨年同時期は15人でした。負傷者の数は死者よりも注目をひきませんが、タリバンが未だに恐るべき敵であることを示しています。アフガンと戦場の活動が少ししかない3つの戦域における1~2月の負傷者は、昨年の85人から、今年は381人へ増加し、ほとんど350%の増加となりました。昨年3月に米軍は50人が負傷し、平均すると1日あたり1.6人でした。今年は3月最初の6日間で44人が負傷し、平均すると1日あたり7.3人です。犠牲者の増加は部分的には2010年の高い兵数によります。米軍の兵数は昨年はじめの32,000人から、年末の68,000人へ増加しました。この兵数は今年もさらに増え、増派部隊の3分の1にあたる10,000人がすでにアフガン国内におり、年末までには30,000人すべてが入国します。増派部隊の多くはカンダハル州の支配を再び握るために使われる計画です。タリバンがより分散していること、カンダハル市の市街地、この州を動かしている政治的、部族的な力により、多くのアナリストは、カンダハルの作戦はマルジャよりも難しいと指摘します。両方の作戦の目的は、戦争を終わらせる政治合意をまとめるために、タリバンを交渉のテーブルに着かせることです。

 記事には戦死者の増加と共に戦争への支持率が低下したことも、数字をあげて書かれていますが、軍事問題に直接関係がないので省略しました。

 ここで死者・負傷者の数字が増えたことは不思議ではありません。昨年、オバマ大統領が増派を決定したとき、私は増派すれば犠牲が増えると書きました。それによって戦争目的が達成できるかは疑問ですし、むしろ、やるだけやったという既成事実作りの増派となると、私は考えました。だから、当然のことが起きたまでです。実は、昨年10月にも負傷者が昨年の4倍になったと報じられています(前の記事はこちら)。2月からマルジャ戦が始まっていますし、有効な対策のないIEDによる攻撃が増えていますから、犠牲が増える理由はいくつもあるわけです。当然、さらに増派部隊が増え、カンダハル戦が本格的になれば、さらに犠牲が増えることになります。それで、戦争目的が達成するのなら、まだ我慢できるでしょうが、そうではないのが問題なのです。このように、勝利に直接結びつかない戦いに、戦力を投入して犠牲を増やすのは避けなければならないことです。記事の末尾に書かれているような、現在行っている作戦でタリバンを和平へ導くのは、できそうにないことです。この虚しい戦いを、私たちは今年の夏に見ることになります。カンダハル州を平定しても、タリバンは他州で活動を継続します。2011年には米軍が撤退を始めるわけですから、時間切れになるのは明らかです。少なくとも、タリバンがそれまでに和平を結ぶことはないでしょう。カンダハル州を失っても、2011年以降に米軍が撤退した後で、アフガン軍・警察と戦い、再支配すれば済む話です。いま和平を結ばなければならないほど、タリバンは追い詰められていません。


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