米がソマリアに無人偵察機派遣を検討中

2010.4.1


 military.comによると、米国防総省はアルカイダと関係のある武装勢力に対抗するため、ソマリアに無人偵察機とその他の限定的な軍事支援を提供することを検討しています。

 アメリカの外交官は、ケニアの首都ナイロビにある米大使館でソマリアの指導者と会談し、軍事的目標の先を考え、彼らの統治を向上させることに焦点を置くよう要請しました。米当局はソマリア政府が戦いが終わったあとで国民にどうやって行政サービスを提供し、より穏健なグループに支援を与えるために取り組むよう望んでいます。一方で、国防総省の指導者はソマリアの脆弱な軍隊の後押しを助けるための選択肢を準備しています。その1つは、昨年秋に西インド洋の対海賊作戦のために派遣された無人機「リーパー」数機を、セイシェル共和国の島からアフリカの角へ無人偵察機を飛ばすことです。武装した無人機はパキスタンとアフガニスタンで武装勢力を追跡してミサイルで攻撃するために使われていますが、アメリカはそれらをイエメンで空から武装勢力を監視するために使っています。米防衛当局者と西欧の外交当局者は匿名で、最終的な決定はなされていないと語りました。米軍兵士をソマリアに送ることは目に見えた選択肢として出ていませんが、少数の遊撃部隊を特定の作戦のために必要となったときに送ることは除外していないと言います。現在、ソマリアで同国の政府を補佐する米軍の軍事顧問はいませんし、いかなる軍事作戦も実行・計画していません。当局者はまだソマリア政府が軍事援助のための要請は何も出していないと言います。最近の会見で、ジョニー・カールソン副国務長官(Johnnie Carson)は「これはアフリカの紛争ではありません。ソマリ人は最終的にこの紛争を解決するでしょう。アメリカは国際社会と共に脇役として貢献できますが、いかなる地上戦にも直接参加することはありません」。当局者はアメリカの観賞や直接的な軍事支援のどんな汚点もソマリアの武装勢力を刺激するだけだと懸念します。過去1〜2年間、アル・シャバブ(al-Shabab)は部族を基盤とした武装勢力の集団からよりアルカイダに近いテロ組織へと成長しました。米当局者は、百戦錬磨のアルカイダの武装勢力がパキスタン・アフガン国境の隠れ家から、干渉されることなく新兵を訓練し動員できる広大な統治されていない場所、ソマリアへ移動するという懸念を強めてきました。当局者は武装勢力が頻繁にアデン湾を渡り、イエメンとソマリア間を移動していることも警告しています。同時に、若いソマリア人がアメリカからソマリアへ戻って、武装勢力と共に戦い、アメリカ国内で攻撃計画を立てるために戻るという恐怖をかきたてています。ソマリアは政府軍がアル・シャバブに対する攻撃を開始すると数ヶ月間言ってきましたが、政府の腐敗と補給品の欠如により開始は遅れています。

セイシェル共和国 地図は右クリックで拡大できます。

 過去に、ソマリアでデルタフォースとレンジャー部隊が大失敗をしているので、地上軍をソマリアに送ることにはアメリカは抵抗があります。そこで、まずは無人偵察機が考えやすいところというわけです。一番考えやすいところなので、それほど意外ではありません。

 こうしてアフリカ軍の役割が増えていくことになるわけです。他にナイジェリア軍の脆弱性に関する記事も載っており、米軍が次第にアフリカで活動する余地が出てきていることを感じます(記事はこちら)。これが、アルカイダとの戦いが停滞するために活発になるのなら意味はありません。「江戸の仇を長崎で」は軍事戦略には関係のない話です。そんなのはただの戦争屋の発想であり、戦略家のものではありません。

 重要なのは、アフリカの多くの国で武装勢力が存在し、武器商人たちのお得意さんになっていることです。こうした構造を生む状況を改善しないと、武装勢力はなくならず、彼らがアルカイダと共闘する危険も消えません。過激主義を生む極度の貧困を解決する方法に取り組まないと、テロも消えないのです。ソマリアに無人偵察機を送るのはよしとしても、それ以外の民生面での画期的な進歩がないと、我々は無駄に戦うことになるだけです。


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