military.comによると、アフガニスタンでタリバンの狙撃兵は旧式の「リー・エンフィールド小銃」を使っています。最初に記事が掲載されたニューヨークタイムス紙の記事から要点を、ごく簡単にまとめました。
今年初期のマルジャ戦の緒戦で、海兵隊は武装勢力の狙撃兵で変わった体験に遭遇しました。ビデオは第6海兵連隊第3大隊K中隊の海兵隊員とタリバン戦士、少なくとも1人のタリバンのガンマンとの間の戦いを提示します。防衛人材データセンター(the Defense Manpower Data Center)によれば、アフガン戦の開始から4月3日までに、銃傷によって死亡した米兵は188人です。これはライフル銃による射撃だけでなく、より強力な「PK機関銃(ロシア製の7.62mm機関銃)」やその他の火器も含みます。カラシニコフ小銃を持つタリバン兵を、米兵は狙撃兵とは呼びません。先進的な光学照準器、高級な弾丸、精密で強力なライフル銃を持ち、高度に訓練された者は700〜800、1,000m以上で人に一発で命中させられます。マルジャでの経験に基づくと、こうした優れたガンマンは400ヤード(365.76m)で1枚のベニヤ板のシートに命中させますが、ほとんどの者は同じ射程でコピー用紙に命中させられません。400ヤードで紙のシートに命中させらるタリバンは少数です。れます。ビデオに写っているタリバン兵は、そういう技術を持つ者です。ビデオに写っているタリバンの武器はリー・エンフィールド銃の2つのバリエーションです。この銃のルーツは19世紀末に遡ります。1丁のライフルは1942年にトロントのロングブランチ兵器工場で製造され、もう1丁はインド政府のライフル銃工場で造られましたが、製造日は不明です。旧式のボルト式ライフル銃「モシン・ナガン」もありました。マルジャでK中隊が捕獲した弾薬は1941年製のエンフィールド銃用の弾薬もありました。ビデオには、海兵隊が肩を撃たれたところが写っています。このビデオが撮影された後、戦いが収まった間に、アフガン兵がタリバンの狙撃兵に撃たれて死亡しました。海兵隊員は射程を500~700mと推定しました。アフガン兵は1発で倒され、弾丸は首に命中していました。
この記事が紹介している事実は、以前から知られていたことを確認するだけの意味しかありませんが、ビデオで直に見ると非常に参考になります。アフガンのムジャヘディンは以前から旧式の銃を使い、1,000m級の射程で目標に命中させると言われていました。彼らが銃の腕を競い合う時、1,000mの彼方に山羊をつなぎ、それを狙い撃つのです。また、子供時代に相手の耳をかするように撃つ射撃ゲームをやったことがある者もいます。これらの話は、ジェームズ・ダニガン/オースティン・ベイ著の「国際紛争の読み方」に書かれています。かなり前に書かれた本ですが、アフガンを理解するには、まだ十分に使えます(ただし、「30ミリ口径の弾丸」と書かれているのは誤訳ですが)。残念ながら、現在はAmazon.comでも取り扱いはないようです。この本を読むだけでも、国際社会がやっている介入は成功しそうにないことが分かります。方向性は正しいのですが、問題が大きすぎて効果を生むまでにならないのです。これは夏休みの宿題を一晩で片付けようというようなものです。
話を元に戻します。ビデオ映像はマルジャ付近の典型的な地形を表しており、カンダハル市郊外の状況も、これをイメージしていればよいと考えられます。このように、進撃する度に狙撃兵に出会い、足止めをくうのが、この種の作戦で時間がかかる理由です。このビデオでは、部隊は航空支援を要請し、グレネードランチャーで発煙弾を発射して、狙撃兵の位置をパイロットから見えるようにしています。発言弾の煙の何百メートル向こうに狙撃兵がいる建物があると連絡するわけです。ビデオの終わりの方で見られる黒煙は空爆によるものと思われます。空爆の後は、多分、装甲車を呼んで建物に接近し、狙撃兵が死んだり逃げたりしたか確認するのでしょう。
ビデオに見られる地形に注目してください。軍事作戦には地形が大きく影響します。非常に見晴らしのよい場所で、武器の照準線も通るため、狙撃兵には都合のよい場所です。重たいエンフィールド小銃はむしろ、遠距離の狙撃には都合がよいのです。前述の本にも、エンフィールド小銃はAKMやAK-74のようなソ連製の自動火器よりも、遠距離では性能がよいと書かれています。しかし、口径が .303の弾丸で1,000mで人や山羊を撃てるのかは、なかなか難しい問題だと思われます。この銃の有効射程は503m、最大射程は1,829mとなっており、1,000mでの弾丸の散開や威力の喪失はかなりのものだと思われます。海兵隊員が土壁から向こうを覗いているのは、そう簡単には狙撃されないという確信があるのと、この距離では弾の威力もかなり弱まっていると考えるからです。実際、背中を撃たれた海兵隊員の怪我が、ライフル銃の傷としては、かなり軽い点がそれを連想させます。
前世紀の銃、半世紀以上前の弾丸でタリバンは戦っています。米軍は開戦以来、何度も装備品の欠陥を取り上げ、改善して来ましたが、それらによって戦局が大幅に改善したかと言えば、そうではありません。ひょっとすると、先進国は物質文明につかりすぎなのかも知れません。特に、ガンマニアが喜んで語りそうな銃の知識など、戦局にはほとんど関係がないことに、我々は気がつくべきです。一番肝心なのは、兵をいつ、どこに配置するのか。または、配置しないかといった戦略・戦術的な判断です。孫子以来、言われ続けてきたことなのに、現代人はまだ満足にできないのです。ここに対テロ戦の問題があります。