カンダハル作戦に早くも暗雲

2010.4.28

 military.comによれば、米軍主導によるカンダハル戦は予想されるよりもゆっくりと進み、オバマ大統領が決めたアフガニスタンからの撤退期限に間に合わないかも知れません。

 アフガンにおける最高指揮官スタンリー・マクリスタル大将(Army Gen. Stanley McChrystal)は、この作戦が時間と忍耐を必要とするゆっくりとした上昇になると説明し、回避できない犠牲者の増大を警告してきました。統合参謀本部議長のマイク・マレン海軍大将(Adm. Mike Mullen)は最近記者に「私はここ数ヶ月、これが南部における極めて難しい戦いになろうとしているのは明白で、損失に見合う悲劇を予測しようとしています」と述べました。この夏にカンダハルを平定する動きは、もっと小規模なマルジャ作戦が成功することを前提としていました。しかし、アメリカとNATOはマルジャにおける目標を達成しておらず、軍と民間の当局者は、政府はサービスを提供するのを遅め、村人の多くが政府の元に再結集していないと言います。NATO上級民間代表のマーク・セドウィル(Mark Sedwill)は「我々は未だに人々が望んでいるよりもゆっくりと動いている」と言います。セドウィルはそれでも全体的な進展があると言い、民間の復興専門家は地方政府がマルジャへの初期攻撃から2ヶ月ちょっとで円滑に活動するのは非現実的だと言います。ここ数週間にマルジャを訪問した米国防総省の上級当局者2人は、治安を提供する海兵隊員が村人から十分な情報を得ておらず、地方の指導者と十分な時間を持っていないと言います。人々は尻込みをし、タリバンが機雷でも政府と手を組むのを恐れており、彼らの信頼を得るチャンスは弱くなっています。軍の戦略家は、彼らの戦術が人口約80,000人のマルジャで効果がないのなら、カンダハルではどうなるのかと懸念しています。彼らが直接タリバンを援助していなくても、カンダハルの100万人以上の住民は武装勢力にシンパシーを持っているとみられます。米軍の特殊作戦群はすでにカンダハルを取り巻く地域に到着しました。6月に、オバマ大統領が命じた30,000人の増派部隊の多くが到着すると、NATOとアメリカはカンダハルでの軍事作戦を大きく拡大する予定です。ラマダン月が始まる8月までに、重要な前進をするのが目標で、夏の終わりまでには暴力と犠牲者は衰え、タリバンの街への支配力は弱められる見込みです。現在、この地域にいる7,800人のNATO軍は夏の初めまでに11,200人に増えます。アフガン軍・警察は12,000人です。

 以前に私は、マルジャ作戦は順当に成功しますが、その後の行政サービスがうまく行くかが問題だ、と書きました。こんなに早くに兆候が出てくるとは思いませんでした。海兵隊と住民や指導者の薄い信頼関係は相変わらずですが、これはタリバンの攻撃を避けるために、1ヶ所に留まるのを最大15分間と限定しているためでしょう。また、しばらく前にタリバン広報官が、米兵の態度のお陰で住民の信頼は揺らいでいないと言ったことがありました。これは米兵が高圧的だったり、アフガン人に敬意を払わないためだと考えられます。米軍が兵士に「Haji」というイスラム教徒への蔑称を使うなという命令を出したという話は聞きません。こんな状態で信頼関係が築けるはずはないのです。比較的問題が少なかった戦後日本の場合でも、沖縄の状況を見れば、米軍はいない方がよいと考える人が多いのです。まして、国内で激しい戦闘を行い、多くの犠牲者を今も出し続けている米軍に、アフガン人が信頼を寄せるはずはなく、その背後にいるアフガン政府も信用しないのです。これは極めて簡単な理屈です。行政サービスは時間をかけて充実させられるかも知れませんが、米軍への信頼はそれが確立される前に時間切れとなるでしょう。カンダハル戦の結果は、この記事により、おおよそ読めたと私は考えます。「勝敗は戦う前にすでに決している」のです。


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