カルザイ大統領が「タリバンに加わる」と脅迫

2010.4.6


 military.comによると、アフガニスタンのハミド・カルザイ大統領(President Hamid Karzai)は土曜日に、改革に外国の圧力を受け続けるのなら、政治的プロセスを止めて、タリバンに加わると脅しました。

 カルザイ大統領は、外国人が昨年の選挙における欺瞞の背後にいるという外交上の論争が起きた直後、選ばれた議員と非公開の会議の席上で、この声明を出しました。議員たちはこれを誇張だと退けましたが、米軍とNAT軍が武装勢力を戦い、アフガン政府を支えることをあてにする大統領が、より不安定になり、外国の後援者を攻撃しないと権威をふるえないという印象を強めました。ナンガルハル州代表のファルーク・マレナイ(Farooq Marenai)は、「彼(大統領)は、外圧におかれるなら、私はタリバンに加わるかも知れないと言いました」と述べました。マレナイは「彼は反攻することが抵抗へと変わるだろう」と言い、これは武装闘争が、選挙で選ばれた政府に反攻することではなく、外国の占領に対する抵抗の1つへ再定義されることを意味するように思われます。マレナイはカルザイが神経質で、繰り返して先週末に議会が、国の選挙期間に対する大統領の権限を強化する法的改革を拒絶した理由を知りたがっていました。別の2人の議員は、カルザイが二回、武装勢力に加わると脅したと言いました。匿名を希望した議員は、カルザイ大統領が彼のコメントがアメリカとの関係に及ぼすダメージを忘れていたと言いました。大統領はすでに土曜日のヒラリー・クリントン国務長官との電話会談で説明をしたと言いました。議員たちは、カルザイ大統領が議会のタリバンの強硬派や支持派の議員の注目を集めようとしていると感じ、武装勢力に加わる本当の真意はないと言いました。カルザイ大統領はアメリカが彼を見捨てることを心配しているようにも見えません。アメリカは自国の国益のためにアフガン駐留を認めています。カルザイ大統領の広報官のコメントは得られていません。

 記事のタイトルを見たときは驚きましたが、要するに、議会が大統領の希望通りの評決をしなかったので、ちょっと脅かしてみたという話でした。アメリカにも、こういう発言をすると通告した上で、確信的に行ったようですから、特に心配する必要はないと考えます。今回の発言はカルザイ大統領の威信をより低くしたのではないかと心配です。直接発言を聞いた議員ですら本気にしないのでは、効果はなかったと見るべきでしょう。

 別に、ロシアでの武装勢力の攻撃が増加しているという記事が出ており、こちらの方が心配です(記事はこちら)。この記事には最近起きた事件がまとめてありますが、武装勢力の全体像に関する解説はありません。前から言っているように、テロは確実に拡大しています。イラクとアフガニスタンだけでなく、パキスタンへ拡大し、インド、アフリカの角、北アフリカ、中央アジア、ロシアがその標的となっています。これだけ拡がると、どんな国も手の施しようがありません。今のところ、明確な国際テロネットワークは存在しません。現在は、適宜、互いの利益のために共闘しているだけです。しかし、こうした状況が何十年も定着すれば、ネットワークが強固なものに変化する危険があります。これはイラク侵攻のような無用の策に熱中し、初動を誤ったブッシュ政権が残した問題です。しかし、こうした危険な未来を警告する者が出てこないのが、本当に不安です。明らかに、現在はより大きなテロリズムの前兆にあり、我々は「まだ見えない脅威」にさらされています。世界中の国家指導者が無能なために、我々はその危険を避けることができないのです。特に、ロシアで行われるソチ・オリンピックがテロの標的になることは明らかです。選手・役員や観客の安全を心配する声はまったく聞こえてきません。


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