イラク爆弾事件:アルカイダ系組織が犯行声明

2010.5.15


 military.comによると、イラクで連続している爆弾事件に対して、イラクのアルカイダ系組織が犯行声明を出しました。イラクのアルカイダの新しい指揮官は金曜日に「血まみれの暗黒の日々」が待ち受けており、新しい攻撃活動が進行中だと警告しました。

 イラクの武装勢力参加のグループ「イラク・イスラム国家(the Islamic State of Iraq: ISI)」は、4月にミサイル攻撃で死亡したアブ・アヤブ・アル・マスリ(Abu Ayyub al-Masri)に代わる新しい戦争大臣として、アル・ナッサー・リデーン・アラー・アブ・スレイマン(al-Nasser Lideen Allah Abu Suleiman)を指名しました。ISIはアルカイダ系グループです。スレイマンは、イラクの「多神論の拒絶者」に対して「長い暗い夜と血まみれの暗黒の日々を待て」「この頃はあなたに起こっていることは単なる小雨だ」とウェブサイトに掲載された録音された音声で警告しました。「多神論の拒絶者」は、スンニ派過激派がシーア派全般を指して言う蔑称です。シーア派は預言者マホメットを継ぐ3人の指導者を拒絶したところから、スンニ派は彼らをこう呼びました。

 この犯行声明が本当かどうかという問題ですが、おそらく本物でしょう。最も恐れていたことが現実になろうとしています。最悪の場合、2004年のイラクが再現されることになります。この年は、50人が死亡する程度の爆弾事件は頻繁に起こり、時々、死者が100人を超す爆弾事件が起こるほど治安が悪化しました。それが、米軍がイラクから撤退しようとしている時に起こるのです。以前から、イラクの治安が再び悪化するのは、米軍がイラクから撤退しようとしている時だと書いてきましたが、いまは絶好のタイミングです。繰り返しますが、イラクの治安が回復したのは、スンニ派がアルカイダに協力するのを止めたのと、シーア派武装組織マハディ軍が活動を休止したためです。このいずれかか両方が活動を再開すれば、イラクの治安は再び悪化するのです。特に、スンニ派が再びアルカイダに協力するようになった可能性が高いことに注目すべきです。なにより、少数になったとされていたアルカイダが、イラク全土で隠れ家を確保し、計画的に行動できるまでに復活していたことを、米軍やイラク軍がまったく察知していなかったことが問題です。これはアルカイダが予告している、さらなる攻撃を防ぐための準備が整っていないことを意味します。彼らは地道に隠れ家に武器弾薬を蓄積し、いつでも行動できるように準備していたのです。このように、テロ組織の手法は柔軟に変化していくのです。米軍は「動きの鈍い巨人」であり、戦いが始まって以来、アルカイダの好きなように翻弄されてきたのです。


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.