military.comによると、米陸軍は最近のテストで、防弾の必要条件を満たせないことが明らかになった改良型複合材ヘルメット(Advanced Composite Helmet: ACH)、44,000個をリコールしました。
このヘルメットはオハイオ州ヘブロン市にある「ArmorSource LLC」社が製造した製品です。この会社のラベルがついたヘルメットを持っている兵士は、ヘルメットを返却し、別の会社の製品へ交換するよう命じられました。 不完全なヘルメットはイラクとアフガニスタンなど全世界に広く配布され、陸軍はどれだけの兵士が着用したかを正確に把握していません。5月13日夜にリコールは陸軍全軍に出て、いくつかのヘルメットはアフガニスタンのバグラム基地で提出されました。ヘルメットは空軍や海軍にもある可能性があり、フィラデルフィアの防衛補給センターが購入した最高で24,000個のヘルメットは他の軍に配布されました。
「ArmorSource LLC」は160万個のACHを生産したベンダー4社の1社です。海兵隊は軽量ヘルメット(Lightweight Helmet)と呼ばれる別のヘルメットを使います。リコールされた「ArmorSource LLC」のヘルメットは全ACHのちょうど4%です。問題のあるヘルメットは2007年8月から2009年11月の間に生産されました。陸軍は同社と102,000個の契約を結び、44,000個を配布し、55,000個は倉庫にあります。陸軍は3,000個の追加発注を中止しました。
このヘルメットに対する最初の疑問は、11月に兵士たちがヘルメットのペンキがはがれていることに気がついたときに起こりました。ペンキはヘルメットの防護に影響を及ぼしませんが、軍当局者に警告を与えました。12月になって、司法省が「UniCorps」社を調査していることを陸軍に通告しました。同社は海兵隊用のヘルメットを作っていますが、「ArmorSource」へ製造を下請けさせていました。1月10日、司法省は調査は「ArmorSource」へも拡大しており、ヘルメットを再テストすべきだと陸軍に勧告しました。陸軍当局は、ペンキの問題について同社がどう対応したかを見るために同社の工場へ行き、彼らがそこで見たものは、彼らに2月2日に製造停止命令を出させました。4月27日に契約取り消しの訴訟が始まりました。5月11日、司法省はさらに調査結果を陸軍に提供し、その翌日、陸軍はアバディーンの陸軍試験場における弾道テストの序報を受け取りました。倉庫にある55,000個の数個を抜き取って追加の弾道テストが行われ、それらは「致死的な貫通」ではなかったものの「完全な陸軍の基準」に合格しませんでした。最悪のシナリオでは、「ArmorSource」のヘルメットを着用している兵士は負傷し得ると判断されました。陸軍は製造契約を結ぶ前に、初期製品多数をテストし、サンプルのヘルメットは合格していました。
以上がざっとした訳です。あきらかに事件は完全には報じられていません。司法省がなぜ「UniCorps」社を調査したのかも分かりませんし、陸軍が工場で何を見たのかも不明です。昨年11月には、問題のあるヘルメットは生産れなくなったのに、今年視察したときに問題が発見されたというのは、何か重大な問題があったことを連想させます。司法省が陸軍に再テストを勧告したのは、何らかの情報をつかんだためと考えるしかありません。陸軍がなぜ事態をすべて明らかにしないのかは、これらの会社に軍からの天下りがいるためかも知れません。
テスト用のサンプルと量産品との間に問題とすべき性能の差があり、15ヶ月間も問題のヘルメットが製造され続けたのです。それが故意によるものか、単なる不注意か何かなのかは明らかにされるべきです。現段階で、陸軍はほとんど事情を把握しているはずですが、対処法だけを発表している点は何かを隠そうとしているとしか思えません。特に、装備品の欠陥は、兵士の家族の間で最も問題になることの一つであり、何かあればすぐに連邦議員に手紙を書く傾向があります。特に、防弾ベストの防弾性能については、すでに問題が起きており、一時は兵士やその家族が自費で評判のよい市販品を購入していたほどです。中には防弾マスクという、顔面全体を覆うものを使用した隊員までいました。このマスクは形状が「スターウォーズ」に登場する帝国軍の機動歩兵みたいで、悪い冗談みたいなものでした。
空軍でも、地上管制用ソフトウェアの更新以後、GPS受信機が位置を検出できなくなるという問題が起きていましたが、ソフトウェアの更新で問題が解決したという記事をmilitary.comが報じています。このように問題が目に見える場合はすぐに対処されるのですが、ヘルメットの防弾性能はテストしないと分からないのです。