天安事件:残る問題は中国の態度

2010.5.29


 天安事件の処理の方向が大体見えてきました。北朝鮮への国際的な制裁は避けられず、残る問題はその強度です。北朝鮮が主張するような全面戦争になる気配はほとんどありません。

 中央日報が中国国際戦略研究院主任のチャン・トォソン博士の発言を引用し「中国は天安艦事態による韓半島の危機局面を危機管理レベルで対処するだろう」「中国は北朝鮮の仕業という明白な証拠と事実が出てこそ対応策を出せるだろう」「最近訪韓した武大偉韓半島問題特別代表が、韓国が確保した証拠を中国に持ち帰って検討した後、立場を整理するとみられる」「北朝鮮の攻撃と明らかになれば、中国は中立的な立場を変えるだろう」と報じました。チャン教授は2006年に北朝鮮が核実験を行った後、中国が国連の対北朝鮮制裁を支持したこともあげました。

 ロシアの専門家たちは、証拠調べの後、北朝鮮の仕業だと結論するでしょう。中国が客観的な立場を貫くのなら、彼らも同じ結論に達するはずです。あとはどういう対応を取るかです。ロシアは犯人が北朝鮮と分かれば、制裁に協力すると申し出ています。中国はそこまでやるかは不明です。ギリギリの線を選択して、安保理の決議を棄権するという態度をとるかも知れません。核実験の際と違い、魚雷による韓国艦船への攻撃は、中国には間接的な脅威にしかならないと判断するかも知れません。日韓米の独自制裁はかなり強力なものになりそうです。私は以前から、中国が北朝鮮に裏口から支援をしている可能性を疑っています。国際的には制裁に協力しながら、分かりにくい部分で北朝鮮が倒れないように支えている可能性です。そうなると、日韓米の制裁は効果が薄れるかも知れません。

 また、聯合ニュースはサンオ級潜水艦4隻が日本海に出港したことについて(2隻は帰港)、韓国軍当局は日常的な訓練と結論したと報じています。これが西海(黄海)なら北朝鮮の強気を示す材料になるのですが、日本海側だったことから、韓国を刺激せずに訓練をしたいという北朝鮮の思惑とも受け取れます。逆に韓国軍は黄海で対潜水艦演習を行いました。海上自衛隊はサンオ級の出航を把握しているのかが気になります。知っているのなら、日本から韓国へ情報提供してもよいでしょう。これは北朝鮮に日韓の協調関係の強力さを知らせ、容易に日本海には出られないという対する圧力になります。

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