朝鮮日報などが報じたところでは、北朝鮮は「天安」撃沈について、かなり苦しい言い訳を展開しています。それは逆に、北朝鮮の事件への関与を強く示唆しています。
北朝鮮は平壌で行った国防委員会の記者会見で、朴林銖(パク・リムス)国防委政策局長は「われわれはヨノ型潜水艇や、サンオ型潜水艇を保有しておらず、130トン級潜水艇もない」「130トンの潜水艇が1.7トンの重魚雷を搭載して、公海を迂回しその船を沈没させ、再び戻るということが軍事的常識から理解できるだろうか。道理に合わない話だ」と説明しました。
この説明はまったく不合理と言えます。1996年に韓国の江陵市(カンヌン)で、サンオ型潜水艦が座礁し、登場していた乗組員と工作員26人が逃亡した事件がありました。いわゆる江陵浸透事件です。逃亡者は、行方不明1人を除くと、残り全員は射殺されるか自決するかなどで所在が確認されました。座礁した潜水艇からは、様々な遺留物が押収され、北朝鮮軍のものであることが確認されています。また、艦は同市に保管・展示されています。これが存在しないという主張は無理がありすぎます。
ヨノ型潜水艇は秘密に包まれている部分もありますが、イランが建造したカディル型と同型で、設計は北朝鮮で、イランでライセンス生産されたと考えられており、globalsecurity.orgでも同型の潜水艇と説明されています。Youtubeにカディル型潜水艇の映像があります。
朝鮮日報は、北朝鮮の海軍は1,800トンのロメオ型潜水艦約20隻、325トンのサンオ型潜水艦約40隻、130トンのヨノ型潜水艇約10隻を保有していると報じています。これが、一般的に認識される北朝鮮の潜水艦の数です。北朝鮮がロメオ型潜水艦しか持っていないなら、北朝鮮の潜水艦隊はこの見積もりの約半数ということになります。先日紹介したように北朝鮮の軍港にはロメオ型とみられる潜水艦の他、サンオ型、ヨノ型といってよいサイズの潜水艦が係留されているのが、衛星写真によって確認されています。
もし、北朝鮮が潔白なら、このような理屈に合わない説明をする必要はありません。北朝鮮は、ヨノ型だけ否定すればよいのに、当初、サンオ型の疑いも言われたために、サンオ型も否定しました。これはやぶ蛇だったようです。北朝鮮は中国などに潔白だと説明した際、疑いを否定できる証拠を求められたが、有効な回答は示せなかったという報道もあります。そこで、こんな苦しい言い訳を考えたのかも知れません。