military.comによると、NATO軍使機関は、アフガニスタンで民間人への被害を減らすために、民間人を危険にさらす武力行使を避けた兵士に「勇気ある抑制(courageous restraint)」を認めることを検討しています。
過去のほとんどの軍事関係の賞は、兵士が機関銃陣地を奪取したとか、銃撃戦で戦友を救ったといったことに対して与えられたと、米陸軍マイケル・ホール部隊最先任上級曹長(Command Sgt. Maj. Michael Hall)は言います。「我々はいま、違う賞をどう探すかを検討しているところです」。アフガン南部のNATO軍指揮官ニック・カーター英陸軍少将(Maj. Gen. Nick Carter)は、4月中旬にホール上級曹長がカンダハル空軍基地を訪問したときに、このアイデアを提案しました。マクリスタル大将はそれをどう達成されたかを判定する提案を精査していると、上級曹長は言います。
マクリスタル大将が出した厳しいガイドラインは、民間人がNATO軍とアフガン軍が原因で死亡する率は減少しました。しかし、散発的に起きる事件でえすら、連合軍の努力に打撃を与えることができ、NATO軍の増派部隊が夏に計画されるカンダハルのタリバン本拠地に対する攻勢に先だって押し寄せると、問題はさらに悪化するかも知れません。アフガン内務省によると、3月21日から4月21日までに173人のアフガン人が死亡しました。これは昨年同時期の33%増しです。内務省は死因に関する分析を提供していません。
兵士に民間人の犠牲を避けるのを奨励する別の方法として賞を用いるアイデアは、NATO軍に対武装勢力戦(COIN)のドクトリンをアドバイスするチームから出たと、このプロセスに詳しい匿名の当局者は言います。最近、NATO軍のウェブサイトに掲載された、対武装勢力・勧告支援チーム(the Counterinsurgency Advisory and Assistance Team)による声明は「我々は通常また組織的に、動的な戦闘活動の間の武勇、勇気、有効性を認めます」「COIN作戦では、しばしば最も有効な銃弾が発射されなかった銃弾であることを認めることも重要なのです」。1月に連合軍がコーランを焼いたという噂が暴徒に岩やレンガを海兵隊員やアフガン兵士に投げつけました。海兵隊員は自衛のために発砲する権利がありましたが、誰も発砲しなかった、と声明は言います。抗議の間に6人が死亡しましたが、銃撃はアフガン軍から来たと考えられています。「自分の兵器を使わないことで驚異的な勇気と自制を示し、緊張と潜在的に破滅的な状況を縮小した兵士を認めて表彰する機会がなければなりません」。
国連によると、昨年は少なくとも2,412人のアフガンの民間人が戦闘で死亡しました。これは2008年の14%増しです。その3分の2は、待ち伏せ、暗殺、IEDによります。
NATO軍司令官は「勇気ある抑制」のために新しい勲章や記章を作る予定はありませんが、民間人の犠牲を避けるために苦労を惜しまない兵士を認めるために、現存する賞を使う方法を検討しています。しかし、カンダハル州のラムロッド前哨作戦基地(Forward Operating Base Ramrod)の一部の米兵は、賞を受けるチャンスが戦場での兵士の決断を変えることに懐疑的です。エドワード・グラハム大尉(Capt. Edward Graham)は「勲章のためにそれをする者はこの連中の中にはいません」。第23歩兵連隊第4大隊所属のグラハム大尉は。兵士は民間人の犠牲を避けるという目標と同僚を守るという任務を秤にかけることを強いられていると言います。「肝心なのは、私が夜、眠りにつく方法を見つけなければならないことです」「もし私が女性や子供を傷つければ、私は眠れません。もし部下を失えば、私は眠れません。私は均衡を見つけなければなりません」。
アイデアとして認めないわけではありませんが、私は検討中の新方針も西欧がアフガン対策で後手に回っていることを象徴していると感じます。前から繰り返して、マクリスタル大将の方針は間違っていないけど、問題が大きすぎるので効果を生むに至らないと書いてきました。この新方針が実行されても、グラハム大尉が言うとおり、大きな変化は生まないと思います。それよりは、「Haji」のようなイスラム教徒に対する蔑称を使うことを全面的に禁じ、違反した者を処罰することで、アフガン人も人間だという意識を兵士に持たせた方がよいと思います。兵士は敵を「非人格化」して認識します。敵は我々よりも劣っており、人間ではなく動物か何かだと考えた方が攻撃するのに抵抗感がないからです。このため、敵ではない非戦闘員も、姿が似ているだけで敵と混同して認識する傾向があります。これを言葉を用いて意識変革させるのです。もっとも、この方法で問題が解決するかと言えば、そうではないでしょう。やはり、アフガン問題は大きすぎるのです。
また、軍隊の表彰というのは、やはり何か勝ち取った者に対して贈られるという文化があり、それ以外の表彰は馴染まない傾向があります。以前にPTSDになった者に対する治療の一環として、名誉負傷章を与えるというアイデアが出たことがありましたが、実現しませんでした。名誉負傷章は戦闘で身体を負傷した者に対して与えられるもので、治療のために使うというアイデアが受け入れられなかったのです。こういう軍隊の文化を変えるのは容易ではありません。結局のところ、軍隊は誰かあるいは何かを攻撃し、破壊するための組織であり、癒しとは無縁なのです。関係のない要素を内部に取り入れれば、うまく機能しないと考えられているのです。新しい勲章や記章を作らないのも、こういう傾向を反映しています。