タリバンが隣接州へ移動して活動

2010.6.12

 military.comによれば、アフガニスタンのナイモズ州(Nimroz province)議会は、そのメンバーがタリバンに殺された後で首都カブールへ逃げました。彼らは米軍主導の東へ向けた攻勢が武装勢力を単に新しいエリアに押し出すことを恐れています。

 ナイモズ州議会のメンバーは隣接するヘルマンド州から押し出されてナイモズ州へ活動を移行したタリバン戦士が、暴力と脅迫を増していることについて述べます。彼らは別の武装勢力が、砂漠の基地で訓練を受けたイランから国境を通ってナイモズ州へ来ていると言います。ナイモズ州に基地を置く海兵隊の広報官は、イランとパキスタンの国境にある遠隔の州の治安は向上したと指摘します。しかし、地方当局者は、約2,000人の海兵隊と約1,000人のアフガン兵は主に北東部、州都ザランジ(Zaranj)から130マイルの位置で活動しており、州の他の場所の状況を知らないと言います。

地図は右クリックで拡大できます。

 ナイモズ州は5月5日に、9人の自爆攻撃犯が警察官の格好をしてザランジにある州議会を襲撃し、女性の議員1人、警察官2人、訪問者1人を殺害した時まで、平和だと考えられてきました。これはナイモズ州の過去2年間で最悪の攻撃でした。タリバンは犯行声明を出し、議会がアフガン人に対し、武装勢力に対して敵意を抱かせようとしていたと主張しました。攻撃の後、残りの議員は、ドアの下に差し込んだ手紙、電話、テキストメッセージなどで、殺すという脅迫を受け取り始めました。シュレン・アジジ議員(Shren Azizi)は、殺された同僚の家族を訪問した帰宅したところで携帯電話が鳴りました。「教師としての前職の方があなたのためだ」と中年男性の声が厳しい声で言いました。「生きていたければ、元の仕事へ戻れ。自分の子供のことを考えろ」。アフガンの法律は、地方議会の少なくとも4分の1は女性議員でなければならないと定めています。爆弾事件の5日後に、議員たちは破壊された州議会に集まり、サジク・チャッカンゾリ議長(Sadiq Chakhansori)はカブールに行くことを決めました。陸路は危険なので、ヘラート(Herat)まで飛行機で行き、そこでカブール行きの飛行機に乗り換えました。高齢と病気の議員1人が後に残りました。

 地方警察長官アブドル・ジャバル・パルデリ(Gen. Abdul Jabar Pardeli)は、隣接する州でのNATO軍の活動が始まった後で、ナイモズ州でのブドウ勢力の活動が増し、より多くの警察と軍隊が必要だと言います。ナイモズ州の海兵隊広報官、バリー・モリス大尉(Lt. Barry Morris)は、武装勢力がファラ州やヘルマンド州から侵入しているという証拠を得ていないと言います。彼は、デルラム(Delaram)でパトロール中の海兵隊が店に立ち寄って、絨毯を買えるほど安全だと感じていると言います。

 今週、カブールでインタビューを受けた議員たちは、おそらく彼らはカンダハル州、ヘルマンド州、コースト州のような一触即発の地域における強い脅威に慣れていないためだとして、この見解を共有しませんでした。巨大な大麻貿易の主要な輸送ルートだとしても、ナイモズ州はアフガン南部で最も安定した地域でした。チャッカンゾリ議長は、イランから数年間の難民から戻ったアフガン人は、イランの砂漠にあるタリバンが運営する訓練所と武器の密売が一般的に行われていることを説明していると言います。NATO軍は最近、タリバンがイラク領土内で訓練をしていることを確認しました。5月下旬、マクリスタル大将はタリバンがイランで訓練や武器密輸をしている明白な証拠があると言いました。


 「ナイモズ」は地図上では「Nimruz」と書かれています。ナイモズ州の南端はパキスタンに接し、西端はイランに接しています。

 昨日、今月タリバンとの戦闘が起きていないのは、彼らが他の地域へ逃走したためかも知れないと書きましたが、実際、その通りだったようです。まったく、これまでに繰り返されたパターンそのものです。しかも、ナイモズ州の海兵隊は危険をまったく認識していません。いずれ、絨毯を購入中の海兵隊員がテロ攻撃で死ぬまでは理解しようとしないのでしょう。現在のように、イラク戦もアフガン戦も失敗しつつあるという評価が定着しつつある最中では、米軍もテロが移動したり、拡大したりすることを認めにくいのです。これはテロへの対処をさらに難しくします。軍隊自身が問題解決から目を逸らしているのです。

 このように、NATO軍は補給線を脅かされているのに、タリバンは訓練基地や輸送ルートを自由に使えています。こうした環境でいくら戦闘を続けても、最終的な勝利には到達しません。ことわざで言う「糠に釘(ぬかにくぎ)」という奴です。イラク戦の初期に、イラク西部から流入するテロ志願者たちに対して、何度も掃討作戦が繰り返されましたが、侵入は遮断できませんでした。アフガンでも同じことが起きています。イラクでこれが解決したのは、地元のスンニ派がアルカイダに協力しなくなったからでした。アフガンでは、タリバンは広く支持されており、とても大衆は態度を変えそうにありません。つまり、この問題は解決できないと考えなければならないのです。

 いよいよアフガン問題は手詰まりです。


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