北朝鮮で食糧配給が休止

2010.6.15

 北朝鮮の窮状を伝えるニュースがありました。space-war.comによれば、中国が追加の穀類を供給しなかった後で、北朝鮮が国民への食糧配給を完全に休止しました。

 北朝鮮とコンタクトしている韓国の団体によれば、5月26日に当面の間、食糧配給はないと発表しました。人々は私営の市場で食糧を買う許可を与えられました。これは中国からの食糧出荷の遅れによります。5月はじめに金正日が北京を訪問したあと、中国は予想された支援を北朝鮮に送りませんでした。私営市場は北朝鮮全土で24時間開いています。1990年代半ばに、北朝鮮は何十万人も死なせた基金を被りました。現在も食糧不足は続いており、国連は子供たちは3分の1が栄養失調だとしています。国家の食糧流通システムは崩壊し、自由市場がしばらくの間容認されました。2005年以降、体制は経済支配を再び行うようになり、私的な市場を明確に禁止しました。11月の通貨切り上げは、食糧不足をあおり、市場取引を涸渇させ、社会不安の爆発を引き起こしました。北朝鮮は私的市場を制限する運動の中止を余儀なくされました。


 この記事で、金正日体制が、すでに「失敗した国家」としての評価が定着しながらも、なぜ崩壊しないかが分かります。中国が最小限の食糧を送ってくくれるので、慢性的な飢餓はあるものの、暴動が大規模になることはないのです。しかし、中国がちょっと食糧提供を止めると、すぐに配給分がなくなるほど、北朝鮮の状況は悪いのです。

 この記事で、中国と北朝鮮の関係が極度に悪化していることが分かります。金正日が訪問したのに、その直後の食糧提供をしなかったのは「動かしがたい証拠」です。同時に、天安撃沈事件で中国が経済制裁に賛成しないことも理解できます。自分たちがすでに制裁を行っているのに、これ以上の制裁が続発すれば、北朝鮮そのものが崩壊し、緩衝地帯としての価値がなくなる危険が出てくるからです。こういう事情を中国が明言しないのは、「テロ国家」の支援元として目立ちたくないからです。同時に、北朝鮮がいくら恫喝しても、天安事件で彼らが韓国を攻撃できないことも分かります。非武装地帯で韓国軍の宣伝用スピーカーを破壊するくらいはともかくも、「ソウルを火の海に」すれば、たちどころに反撃を食らい、食糧配給がなくなった北朝鮮国民はパニック状態に陥ります。2003年にイラクが米軍主導の軍隊に負けたのも、イラクが穀物などの基本食材を国家が配給する体制だったためです。侵攻軍がバグダッド周辺まで進出しただけで、フセイン政権が食糧配給ができないことが明白になり、結果としては一時的なものでしたが、イラク国民は抵抗を止めたのです。国民がそっぽを向かないように食糧を支配するような方法は、逆に、国家が傾いたときに急速な崩壊を招く原因となります。

 次なる関心は、中国がいつ食糧提供を再開するかです。


Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.