オバマ政権が北朝鮮の核を容認する?

2010.6.16

 military.comによると、外交問題センター(The Center on Foreign Relations)が北朝鮮の核装備に関する報告書を公表しました(pdfファイルはこちら)。それは、北朝鮮の核への野心に対する混乱したアメリカの戦略は核保有国としての北朝鮮を容認する可能性があると指摘しました。

 この報告書は、北朝鮮の核兵器を除去しようとするオバマ政権の努力は曖昧で及び腰だと言いました。数人の米特使は核交渉、人権問題と制裁実施に関して、北朝鮮に圧力をかける責任を分担していますが、「こうした慎重な任務は切迫感や政権の上級レベルでの優先順位に裏づけられている明確な証拠はありません」と報告書は書いています。天安事件はすでに悪化している北朝鮮に核計画を放棄させる外交的な努力を難しくします。6ヶ国協議は北朝鮮のミサイルおよび核爆弾の実験への国際的な非難に、平壌が猛烈に反応して行き詰まりました。北朝鮮に核への野心を捨てさせるための漠然とした時間枠は、アメリカの政策が北朝鮮が核保有国になったことを既成事実として黙認する結果を生むだろう、と報告書は書いています。

 国務省はコメントの要請に直ちに応じませんでした。報告書の議長はクリントン政権期の在韓米軍指揮官ジョン・ティレリ・ジュニア(John Tilelli Jr.)、チャールズ・特使ジョージ・W・ブッシュ政権初期の北朝鮮特使でクリントン政権のアジア担当補佐官のジャック・プリチャード(Charles "Jack" Pritchard)です。

 報告書はオバマ政権の北朝鮮を対象にした強い口調と、手詰まりの核問題に対するアメリカのいわゆる及び腰の行動を対比します。「オバマ政権の現在のアプローチは北朝鮮の継続中の核開発や核拡散の潜在力に対抗する戦略を進展させるのにはあまりにも不十分です。アメリカと中国は北朝鮮に関して一体で取り組むように迫られていますが、そうすることには失敗し、地球温暖化、イランの核開発計画、貿易・経済問題といった他の分野での米中の協力関係を危うくしました。報告書はさらに、核実験を行ってから政治指導者を変えずに針路を反転した国家はないことから、交渉が北朝鮮に自発的に核計画を諦めさせるという幅広い悲観論を指摘しました。6ヶ国協議は北朝鮮を変化させるための最高の体制だけど、当局者は最後には制裁や軍事的手法のような非外交的ツールを適用する必要があると分かるかも知れない、と報告書は言います。


 この報告書は「U.S. Policy Toward the Korean Peninsula」で、外交問題センターのウェブサイトに掲載されています(紹介記事はこちら

 内容をすべて把握していませんが、報告書の内容もそれほど明確ではないという印象です。特使の任務が分けられていることが問題の根本とは思えません。ブッシュ政権やそれ以前の政権と比べて、著しく問題があるのならともかくも、北朝鮮の核を容認するという結末は、他の政権でも起こり得たことだと思います。北朝鮮の核問題が解決しないアメリカの苛立ちが報告書に反映されただけのようにも受け取れるのです。

 もう一件、北朝鮮関係の記事を紹介しておきます。これは朝鮮半島での全面戦争がないことを、さらに裏づける内容です。military.comによれば、金泰栄(キム・テヨン)国防大臣は議会で、北朝鮮は警戒態勢を強化したものの、軍事境界線とその後方地域で深刻な軍の活動はない、と述べました。


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