military.comによると、15日付けで紹介した、タリバンをパキスタン情報部が支援しているという、マット・ウォールドマン(Matt Waldman)が書いた論文をタリバンが否定しました。
ウェブサイト「the Voice of Jihad」に掲載された声明で、アフガンのタリバンはこの論文を「イギリスとアメリカの利益を促進するために出された根拠のないプロパガンダに過ぎない」と否定しました。タリバンは、アフガン国民の支援でアメリカやアフガン政府と戦っており、パキスタンの支援は必要がないと主張します。「侵入者に対する現在の聖戦と抵抗は、アフガン国内に拠点を置くイスラム首長国(the Islamic Emirate)の指導者に率いられ、明らかにアフガンの聖戦を遂行する人たちの協力と支援と共にあります」「敵が認めているとおり、イスラム首長国はアフガン領の70%を支配しています。イスラム首長国は現在の支持された抵抗を続けるために、国外の評議会のようなものを持つ必要がありません」「現在の抵抗は完全に、侵入者の攻撃に対する地元で生まれたアフガン人・イスラム教徒の抵抗です」と声明はいいます。タリバンは、パキスタンはアメリカ支援を宣言しており、パキスタンが彼らを支援するのは不合理であり、彼らの支援の兆候と影響ははっきりと目に見えている、としました。
タリバンに対するパキスタンの直接的支援は長いこと公然の秘密でした。パキスタン政府はISIを通じて、タリバンを援助し、1990年代に力をつけるのを助けました。パキスタンはタリバンを合法的な政府と認めた3ヶ国の1つでした。2001〜2002年に、アメリカがオマル師を権力の座から追い出した後、タリバンとアルカイダはパキスタン北西部のバルチスタン州で再編成しました。アフガンのタリバンはパキスタンのタリバンと協力し、パキスタンに隠れ家と訓練基地を維持しています。「クエッタ・シューラ(The Quetta Shura)」というアフガンのタリバン評議会の名前は、拠点を置いているパキスタンの都市の名称です。ISIは、ハッカニ・ネットワークを通じて、カブールのインド大使館とその他の標的に自爆攻撃を行ったことで知られています。パキスタン軍の将校数名がアフガンでアフガン領内でのテロ攻撃に関連したために逮捕され、アフガンのタリバン指揮官多数が、過去数年間にパキスタン軍から支援を得ていることを認めています。
「the Voice of Jihad」はタリバンが運営するウェブサイトですが、アドレスは今のところ分かっていません。このサイトは色々な記事で引用されていますが、英語版がないのかも知れません。
パキスタンがタリバンを支援していることは、かなり前から耳にしていました。アフガン政府の前身である「北部同盟」のマスード指揮官(同時多発テロ直前に暗殺で死去)も、パキスタンのそうした意向を知り、アフガンに強力な政府を作ろうと考えたと聞きます。パキスタンはアフガンが混乱していた方が、自国の安全保障のために都合がよいと考えていたと、マスード将軍は言っています。
真相がどうなのかは不明です。タリバンでも、パキスタン国内の派閥はパキスタン政府と戦っています。アメリカが同国の核兵器がタリバンの手に落ちることを心配するように、パキスタン自身がタリバンによって、安全保障を脅かされているように見えます。しかし、パキスタン自身がタリバン化したいと考えているのなら、これはむしろ歓迎することでしょう。
このように、現在のタリバンとパキスタンの関係はどうにでも解釈できるほど、情報が流動的です。彼らはおそらく、自分たちの視点だけで戦略を考えていて、他国がどう見るかは問題にしていないのです。アメリカのような大国が、自分たちのような小国にいつまでも関わり続けるはずはないことを踏んでおり、適当に受け流そうという意図が感じられます。先日、豊富な地下資源がアフガンにあることが確実になったことは、こうした動きに多少の変化を生むかも知れませんが、どうせアメリカ人はいずれ、自分たちの楽しい世界に帰って行くという見方は変わらないでしょう。
アフガン、パキスタン、ソマリアなど、これからアルカイダが関与していきそうな国は、ブラックボックスのように状況が見えない場所です。少しでも詳しい情報が欲しいのですが、頼りになりそうな情報はなかなか見つかりません。孫子が言うように、相手を知らないと対策は立てられないのです。