天安事件:国連決議は不可能か?

2010.6.22

 産経新聞が、「哨戒艦撃沈 安保理交渉暗礁に 日米韓と中露 対立大きく」という記事を報じました。一方、朝鮮日報はロシアのメドベージェフ大統領が徹底調査を主張する記事「哨戒艦沈没:ロシア、徹底調査を主張」を報じています。

産経新聞

中国は事件を「不幸なできごと』と中立的な言い方で表現し、「(韓国、北朝鮮)双方の主張を徹底的に検討する必要がある」と、現時点では日米韓の求める北朝鮮非難には応じない姿勢を明確にした。ロシアは韓国・北朝鮮混成の調査団の結成まで提案。日米韓と中露との対立の構図がくっきりと浮かび上がった。

 

朝鮮日報

メドベージェフ大統領は「一つの筋書き(北朝鮮の魚雷攻撃による沈没)だけが広まっているが、われわれはそれを当然のこととして受け入れてはならない。できる限りの徹底した調査が必要だ」と指摘。同時に「調査結果が明確なものとなり、一般的な事実として認識されれば、過ちを犯した者に対する処罰を議論可能だ。過ちを犯した者とは国家や勢力を意味する」と語った。


 国内メディアが使う日米韓と中露の対立という構図は不適切だと思います。日韓米は一致していますが、中国とロシアは別々に動いています。日韓米と中国が対立し、ロシアはまだ態度を決めていないと考えるのが正確です。ロシアが突っ張るのは、最初に調査団に加えてもらえなかったので、ここで自分たちの存在価値を見せるために、徹底的な調査をする必要があるためです。そうしないと、自分たちを調査団に加えるべきだという主張に意義を示せません。調査団はすでに公表されている報告書の全体を再分析し、欠点をすべて洗い出しているはずです。その上で、北朝鮮の犯行と結論されれば、より強力な論拠となるでしょう。あるいは、北朝鮮の疑いが強いが、断定できないという結論になるかも知れません。おそらく、北朝鮮の仕業ではないという結論にはならないでしょう。それでは、真犯人は誰かという話になるからです。その疑問にはロシアも答えを見出し得ないので、面子を失う危険があります。ロシアは報告書よりも詳しい結論を見出すことで、自分たちの存在意義を主張することに目標を置いています。そのための調査が終わっていない段階で、産経新聞みたいに国連決議が無理になったと結論すべきとは思えません。ロシアがどんな結論を出すかにより、この問題の結末は異なります。まずは、ロシアの報告書を待つべきです。

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