天安事件に関して、韓国の北朝鮮に対する態度に変化が見られ、当初よりも軟化しているように思われます。
中央日報によると、4日に金泰栄(キム・テヨン)国防部長官と会談したロバート・ゲーツ国防長官は「韓国は韓半島の緊張を懸念し、全面的な対北朝鮮決議を推進しないようだ」「韓国が国連で決議や議長声明のうち、何を推進しようとしているのか明らかでない」「(韓国が)決議を推進しないからといって北朝鮮の挑発の本質を認識していないというわけではなく、今後、不安と挑発が誘発される懸念をなくすためだと考える」と述べました。
ワシントン・ポストによると、戦没者追悼記念日で、李明博大統領は北朝鮮との和平努力が必要だと述べました。「我々には成し遂げていない夢があります」「それは、未だに貧困と抑制で苦しむ北朝鮮の同胞と、自由、平和、繁栄のもとで生きる統一した国になることです」と李大統領は言いました。
ゲーツ長官の発言から、韓国が制裁決議ではなく、議長声明で収める可能性が出てきました。今度ばかりは制裁決議だと思いましたが、北朝鮮の「制裁なら戦争」と、中国の賛成が得られそうにないことを考え、現実的なところに落着したのかも知れません。これが北朝鮮にさらなる増長をもたらす危険はありますが、北朝鮮に戦争の口実を与えないことで戦争の危険を回避する効果はあります。また、韓日米の独自制裁に力点を置くことで、実質上の経済制裁を行うこともできます。もっとも、これを北朝鮮が承認するはずはなく、強く反発する可能性はあります。この時点で、李大統領が「和平」という言葉を使ったことからして、国連決議を求めないことは明らかです。また、中国がごねて、北朝鮮を捕まえ損ねるわけです。
これまでの経緯から、中国が北朝鮮の崩壊を望まないことは明らかです。今後、すくなくとも数十年間は、中国は北朝鮮政策を変えないでしょう。いま、制裁に賛成すれば、将来、再び制裁を支持することになる危険があり、それは北朝鮮の崩壊をもたらして、中国とアメリカが朝鮮半島で直接対峙する時代を到来させます。現段階で、軍の能力に自信のない中国は、少なくとも自分たちの兵器が数でアメリカを圧倒できるようになるまでは、北朝鮮にいて欲しいのです。中国の兵器をアメリカ並みに性能を上げるのは困難ですが、それに近いところまで行けば、あとは物量でなんとかできます。もし、中国の兵器がアメリカの兵器にかなわないことが明らかになれば、それは中国国内の不満分子を奮い立たせ、国の分裂を誘発しかねないと、北京は考えているのです。1日の記事で「韓国は中国の立場を今は理解できないだろうが、長期的にはわれわれの判断が正しかったことを悟ることになる」という中国政府のコメント紹介しましたが、これには前記の国家戦略が反映されています。
この考え方で中国の行動はすべて読み解けると言っても過言ではありません。