海賊がアデン湾で減少、インド洋で増加

2010.7.17


 「Inspire」の件は後回しにして、他の問題を先に取り上げます。military.comによれば、今年最初の半年間で、全世界の海賊による攻撃は18%減少しました。

 昨年は、全世界の海賊による攻撃は39%増加、過去6年間で最高の406件でした。この半数以上がソマリアの海賊による襲撃でした。国際海事局(the International Maritime Bureau)は、今年1月から6月までの全世界の海賊の攻撃が196件に減少し、昨年同時期の240件から下落したと報告しました。アデン湾での攻撃は86件から33件へ減少しました。しかし、ソマリア沿岸、つまりアデン湾を除いた、より広いインド洋より広いインド洋では、1年前の44件から51件へ増加しました。今年半年で、海賊に乗り込まれた船は70隻、ハイジャックされたのは31隻、人質になった乗員は597人、殺害されたのは1人でした。ハイジャックされた船の内、11隻はアデン湾内で、16隻はインド洋海域で、ソマリアの海賊に捕まりました。同局は、ソマリアの海賊がより遠い海域でハイジャックを行う能力を増していると言います。

 後半は省略します。


 ソマリアの海賊を撃退した鍵は、航行する船が基本的な対策を行うことでした。海賊の乗り込みを容易にする階段をぶら下げたままで航行しない、放水ホース、甲板に電気柵や鉄条網を設置する、ソマリ族が嫌う犬を乗せるなどの対策は効果的だったといわれています。さらに、アデン湾では海軍艦船によるパトロールが増加し、海賊が行動しにくくなりました。そこで、海賊はアデン湾での襲撃を減らして、より遠くまで行くようになったわけです。すると、インド洋を航行する船舶は、アデン湾を航行する船のような対策を行っているのかが気になります。次にやるべきなのは、アデン湾での対策をインド洋でも行い、どうなるかを見極めることです。それで海賊が減るようなら、対処策は概ね成功したことになります。あとは、ソマリアの国内的な問題を解決して、海賊志願者を減らすのがポイントになります。

 時間がないので、その他の記事を紹介だけしておきます。6月に米陸軍の自殺者が32人に達し、月間記録で過去最高となりました(記事はこちら)。PTSDの治療に、MDMA(通称、エクスタシー)が有効との研究報告が出ました(記事はこちら)。治療に使えても、薬物依存症という問題があるように思われ、大変に気になります。

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