アフガンで工兵部隊に被害が急増

2010.7.22


 military.comが、アフガニスタン南部での戦闘の様子を報じました。フォート・ブラッグ基地に駐屯する第18空挺軍団の兵士が過去1ヶ月間で8人も戦死しました。この記事から戦闘の様子を考えることができます。

 被害はすべて、第20工兵旅団第27工兵大隊の隊員が被りました。8人中、6人は2件の道路脇に仕掛けられたIEDが原因で、他の2人は別々の武装勢力の攻撃です。

6月11日
マリオ・ロドリゲス3等軍曹(Sgt. Mario Rodriguez)
ポーラック(Powrak)で、所属する中隊が銃火とRPGで攻撃を受けた。

 

6月16日
ジョセフ・D・ジョンソン技術兵(Spc. Joseph D. Johnson)
ガナー・R・ホッチキン上等兵(Pfc. Gunnar R. Hotchkin)
クンドゥズ州で、車両がIEDにより攻撃を受けた。

 

6月21日
スコット・A・アンドリュース技術兵(Spc. Scott A. Andrews)
ザブル州 自爆テロ班犯が車列を攻撃。翌日死亡。

 

7月14日
チェース・B・スタンリー技術兵(Spc. Chase B. Stanley)
ジェシーD.リード技術兵(Spc. Jesse D. Reed)
マシュー・J・ジョンソン技術兵(Spc. Matthew J. Johnson)
ザカリア・M・フィッシャー3等軍曹(Sgt. Zachary M. Fisher)
ザブル州で乗車中に強力なIEDで攻撃を受けた。

 

 所属部隊の指揮官によると、部隊は、ここ数ヶ月、これ以上のIEDを発見していません。犠牲者の急増を理解するために、傾向を調査したものの、原因は分かっていません。

 さらに、military.comによれば、武装勢力がバグラン州(Baghlan province)でダハナヤ・ゴリ地区(Dahanah-ye Ghori district)で政府ビルを攻撃しました。この時に、武装勢力は検問所を襲撃し、アフガン人警察官6人を殺害して、斬首しました。


 一見して分かるように、IEDが有力な殺害手段となっています。タリバンは銃撃戦をできるだけ避けています。イラク移行、武装勢力が常用するようになった手法を使い続けています。逆に言えば、国際部隊には、それに対処する手段がないわけです。

 工兵部隊に被害が集中しているのが偶然なのか、タリバンの狙いなのかが気になるところです。つまり、IED処理を担う工兵部隊を意図的に狙っているのかです。たまたまタリバンが攻撃を強化したところに工兵部隊が駐屯していたのかも知れません。タリバンの戦術は、正規軍同士の戦いに必要な「戦力の集中」とは少し違っています。彼らの攻撃は、一見勝利につながらないように見えますが、確実にボディブローのように効いてきます。正面攻撃を避け、勝てる場所でだけ確実に勝とうとします。国際部隊の活動が空振りに終わりがちなのは、このためです。

 以前から指摘し続けていることですが、アルカイダにはじまるアメリカなど先進国に対する攻撃は、それなりの成果を生みました。中東から西アジアにかけて大イスラム帝国を建設し、イスラム教がシーア派とスンニ派に別れる前の状態を取り戻すとするアルカイダの目標は達成できるとは思えません。しかし、アメリカなどがアルカイダの活動を止めさせることもできそうにありません。アルカイダは活動を継続し、徐々にその立場を固めていくことができます。 こうして、終わらない戦いが延々と続くことになります。いつかは、両者の間で和解が行われるでしょうが、それは数世代を経る必要がありそうです。

 こうなった原因の一つは、先進国の軍事的な考察が未熟で、状況を正しく分析し、行動方針を決めることができなかったことです。ピカピカの勲章をぶら下げる将軍たちは、自分の出世コースにはまり込んでいるだけで、新しい戦争に対応する能力を持っていませんでした。彼らの頭の中にあるのは、退役後、どの軍需企業が拾ってくれるかということだけです。だから、何か問題を起こすと、傷が広がらないうちに退役してしまうのです。そんな軍人を、ここ数年、何人も見てきました。この程度の人物しかいないのでは、このやっかいな紛争を戦い抜くことは不可能です。さらに、進化を続けてきた国際人道法の分野も、そのルールを踏みにじることで後退させました。

 特に悲観的にならなくても、我々の未来はかなり暗いのです。


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