妻子を射殺、自殺未遂の憲兵隊員が起訴

2010.7.24


 まだ真相は分かりませんが、気になる事件が起こりました。military.comによれば、アラスカ州で、アフガニスタンから戻ったばかりの、キップ・リンチ技術兵(Spc. Kip Lynch)が、妻のラクェル(Racquell)と8ヶ月のカイリスタ(Kyirsta)を射殺し、さらに自分自身を撃った事件で、第1級及び第2級殺人罪で起訴されました。

 遺体は4月28日にアパートの大家と憲兵に発見されました。リンチ技術兵は家の別の部屋において、重体で見つかりました。検察官は、リンチ技術兵が家族を撃ったあとで、自分を撃ったとされます。リンチ技術兵は憲兵隊の隊員で、事件の2ヶ月前にアフガンから戻ったばかりでした。リンチ技術兵は起訴できるまでに回復し、アンカレッジに戻り、州裁判所での公判に向けて拘束されています。保釈は500,000ドルで承認されました。リンチ技術兵は、パキスタン国境付近で、第25歩兵師団の第4空挺旅団戦闘団と共に勤務しました。

 アンカレッジ警察によれば、周囲の話ではリンチは暴力的な性格ではなく、アラスカ州内で彼には犯罪歴はありません。警察はリンチ技術兵が薬物やアルコールの影響下にあったかを判断する薬物検査の結果を公表していません。


 この事件はまだ詳細に不明な部分があります。しかし、PTSDが原因である可能性を考えざるを得ません。

 派遣から戻った隊員は、まず1ヶ月は完全な休暇をもらえます。それから基本的な日課に戻り、徐々に次の派遣に備えて訓練を始めます。帰国後2ヶ月ならば、まだ勤務はそれほどきつくない状態です。その時に限界に達し、家族と自分を滅ぼそうと決心した理由が何かが問題です。もちろん、家族の不仲、離婚、借金などの経済的な問題が原因である可能性もあります。しかし、この事件は発生から2ヶ月が経っています。本人の自供がなくても周辺調査はできます。特に、家の中から離婚届や借用書、本人が書いたメモや日記が出てくれば、原因と特定できるかも知れません。しかし、この記事には、そうした記述がありません。それは、これらの理由が存在しないことを窺わせます。2ヶ月間近く、本人が入院して事情を聞けない事件ですから、周辺調査に力が入るのは言うまでもありません。それでも、記事に何の記述もないのです。もちろん、PTSDだとも書いていませんが、その可能性は高いと、私は考えます。そうであれば、これは非戦闘部隊に深刻なPTSDが起こり得る重要な証拠となります。

 続報があればお知らせします。


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