いまさらという感じですが、military.comによると、フランスがアルカイダに対して戦争を宣言しました。
4月にアルカイダが人質にしていたフランス人の人道支援活動家を殺害したあと、北アフリカのアルカイダの拠点に対してフランスは最初の攻撃を行いました。戦争の宣言はその後に行われました。これはフランスの戦略の変更を示します。人道支援活動家は4月20日か22日にナイジェリアで「イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ」によって誘拐され、あとでマリへ連れて行かれました。
正確な記録は確認していませんが、フランス人がアルカイダに殺されるのは、これが初めてではないはずです。この事件を理由に参戦するのではなく、以前からアルカイダに対する態度を明確にすべきだという戦略の転換があり、今回の発表に至ったと考えられます。かつては、アルカイダとの戦いに慎重だったフランスが方針を大きく変えたことになります。
率直に言って、今回の発表は唐突な印象であり、肯定的な意義は感じません。また、国際法の発進地であるフランスが、戦争に関する言葉をさらに複雑にしたという印象を受けます。
本来、宣戦布告は、開戦の理由を述べて、戦意を表明することでした。これは外交チャンネルを通じて、相手に渡さなければなりません。しかし、アルカイダの場合、どこに連絡すればよいのか分かりませんから、今回の戦争の宣言はフランスが自分で発表しただけです。これは、本来の宣戦布告とは違います。そこで、今回は「宣戦布告」と訳することに抵抗を感じたので「戦争を宣言した」と書きました。
記事に「France has declared war on al-Qaida.」と書かれているように、フランスはアルカイダに宣戦布告(declaration of war)をしたことになります。第1次世界大戦以前は、戦争は国家同士で行われ、開戦にあたっては戦意の表明が必要とされました。それがない戦争は「紛争」「事変」と呼ばれ、戦争法も適用されませんでした。第1次大戦後、戦意の表明成しに戦争がはじまることが増え、これらは「事実上の戦争」と呼ばれるようになりました。さらに、植民地で発生するようにいなった民族解放戦争になると、相手は国家ではなくなります。こうした現実の変化を追いかけて戦争に関する法律も整備されていくのですが、いよいよ追いつかなくなったという感じがします。民族解放戦争ともいえない、アルカイダのようなテロ組織に対する戦意の表明を宣戦布告と言うべきなのか、私は確信が持てません。
戦争を宣言することで、フランスにどんな変化が起きるのかといえば、アルカイダによる攻撃がフランス本土や海外の資産、国民に対して行われたとき、フランスは軍事活動を行う必要が生じます。危機を放置すれば、それは敗北とみなされます。よって、フランスは勝つまでアルカイダと戦い続けることになります。
私は、戦争を宣言したことで、フランスも終わりのない戦いに巻き込まれたと考えます。こうするのではなく、個々のテロ攻撃に対して対処するという方針を維持すれば、少なくとも終わりなき戦いをする必要はありません。小さな表現の違いですが、戦争においては、言葉の表現も時には重要な意味を持ちます。
なお、「Wikileaks」の件は、まだ公開された情報を一部でも検証できていません。コメントするには、もう少し時間が必要です。あとで別の記事も紹介する予定です。