しばらく前から、アーリントン国立軍人墓地の墓が正しく表記されていないという問題がmilitary.comで報じられていますが、徐々に拡大しているので紹介します。(記事1・記事2)
先に、19年間墓地を運営したジョン・メッツラー(John Metzler)と副官サーマン・ヒギンバサム(Thurman Higginbotham)は、211の墓が資料に記載されず、誤記があった件で辞任させられていました。その後、米議会が調査を開始し、その結果、4,900〜6,600の墓が墓地の地図に記載されていないか、誤記がある可能性があることが分かりました。メッツラーは公聴会で全責任を認めたものの、職員は墓の位置を探すのに間違いを起こしやすい複雑な書類に頼っていたのが原因だと言っていると述べました。議員たちは、彼が事態を知りながら対処しなかったと憤慨しています。
アーリントン墓地には約300,000人が埋葬されており、1日に約30件の葬儀が行われ、年間400万人以上が訪問します。
アーリントン墓地はワシントン市にある国立軍人墓地で、陸軍省が直接管理しています。ここには、すべての軍人が埋葬されるのではなく、既定の条件に合致し、本人が希望した場合に限られます。現役だけでなく、退役者も資格を得られ、政府の要職を務めた人なら民間人も埋葬されます。特別な許可が出れば、軍人の家族が一緒に埋葬されることもあります。その他、無名戦士の墓もあります。多くの軍人は民間の墓地や州などが運営する軍人墓地に埋葬されています。つまり、アーリントン墓地はアメリカを象徴する特別な場所です。Google Earthで、その位置を確認してみてください。国防総省に隣接していることが分かります(kmzファイルはこちら)。そこで、約2%の墓地の位置が分からなくなるという、とんでもないスキャンダルが起きたわけです。
世の中のいい加減さを思わせる話です。これでは、民間の墓地の方がずっと正確です。海軍法務部を部隊とする人気テレビシリーズ「犯罪捜査官ネイビーファイル」で、アーリントン墓地が登場する話があります。ドラマの中ではサブストーリーの扱いで、タイトルや何話だったかは思い出せませんが、確かこんな話でした。癌を宣告された女性隊員が、墓地のある場所に埋葬されたいと考えて申請を出すのですが、そこは別の将官が埋葬を希望している場所でもありました。要するに二重登録の問題です。最終的には、癌の宣告は誤りであることが分かり、女性隊員が申請を取り下げて一件落着になります。こんな物語が書かれる背景には、かねてからアーリントン墓地の管理問題は指摘されていたのだろうと推測します。
墓の管理にかかる直接的な経費は、装甲車一両分の費用もかからないでしょう。パソコンとデータベースソフト、バックアップ装置があれば完璧に管理できるはずです。前線に送り込む兵器には惜しげもなく金を投じるのに、軍人墓地の管理には予算が出ないというのは変な話です。現状では、位置が分かっている墓に、本当に本人が埋葬されているのかも不確かです。