ロバート・ゲーツ国防長官(Defense Secretary Robert Gates)が来年退任し、スタンリー・マクリスタル退役大将(retired Gen. Stanley McChrystal)がエール大学で教鞭を執ることになりました。
military.comによれば、ゲーツ国防長官はワシントン州で民間人の生活に戻ることを望んでいましたが、オバマ大統領の要請によりその座に留まっていました。「Foreign Policy」誌に掲載されたインタビューでゲーツ長官は、2011年に退任する意向を示しました。これは、ゲーツ長官がアフガニスタンで進行中の戦争を監督し、2012年の大統領選挙の前に退任することを意味します。ゲーツ長官は2006年12月から国防長官を務めていました。国防総省当局は、後継者についてはコメントしていません。
military.comによれば、エール大学(Yale University)はマクリスタル退役大将を、リーダーシップに関する大学院レベルの講義を教えるために雇ったと発表しました。エール大学は、この講義は国際化における劇的な変化が現代のリーダーシップの複雑さをどう増加させたかを探ると述べています。
昨日は記事を更新できずに申し訳ありませんでした。
オバマ大統領に要請されて国防長官を続けていたゲーツ長官が適切な時期を選んで退任することになりました。記事にはゲーツ長官は共和党員と書かれていますが、実際には親共和党でありながら無所属です。それで、オバマ大統領も続投を頼みやすかったのです。
ゲーツ長官は前任のドナルド・ラムズフェルドに比べると本当によく務めたという印象があります(関連記事1・2)。彼のような人が後任に選ばれることを期待します。もともと、長官は大学で学長を務めていましたから、また大学に戻るのかも知れません。
ゲーツ長官は任期中に不適切な発言を一度もしていません。だから、彼の発言は常に安心して聞けました。彼は対テロ戦の戦略転換を進め、米軍の部隊やポストの削減も進めました。一連の作業に区切りをつけた段階で退役するつもりなのです。マクリスタル大将をアフガン駐留米軍指揮官に推薦しながらも、彼の不適切な発言が明るみに出ると、直ちに更迭を決断しました。冷戦型から対ゲリラ戦への転換はまだ完全ではありませんし、対テロ戦に勝機は依然として見えません。しかし、ゲーツ長官は米軍を正しい方向へ導くのに成功したといえます。これは民間人でもアーリントン国立軍人墓地への埋葬が許可されるほどの功績と考えます。ひょっとすると、ワシントン州での生活が長いゲーツ長官はそれを望むかも知れません。
こういう人が常に国防長官など、米政府の重要ポストを占めているのなら、世界中の人々も安心していられるでしょう。ブッシュ前政権の悪夢を思えば、アメリカには常にそういう政府を持つように強く求めたくなります。
舌禍事件で退役したマクリスタル大将が名門エール大学で教鞭を執るのは、いかにもありそうな展開です。こういう第二の人生をうまく始めるには、陸軍に固執するよりも、さっさと退役した方がよいという計算をマクリスタル大将はやったのです。つまり、「どんな仕事でもいいから、最後まで国家に貢献させてくれ」とは考えていないわけです。同じような動きをする米軍人は珍しくありません。
リーダーシップの講義は一種の精神訓話に近く、学術的なものではないでしょう。エール大学はアメリカの指導者を多く輩出した国です。ブッシュ大統領も親子でこの大学を出ていますが、息子の方は明らかにロクデナシで、こんな人間でもエール大学を卒業できるという典型でした。同じエール大学を出たオリバー・ストーンは映画監督になりましたが、「大学時代に勉強なんかしなかった」と回想しています。エール大学は、金持ちが自分の子息を進学させる場所であるという性格が強く、マクリスタル大将は一種の名誉職みたいなものを得たのに過ぎません。
これは湾岸戦争を勝利に導いたノーマン・シュワルツコフ大将とは対照的の余生の送り方です。シュワルツコフ大将は、陸軍長官から陸軍参謀総長への椅子を打診されましたが、固辞して退役しました。その後も、政治的な活動にはそれほど参加していません。イラク戦争にも途中から反対の立場をとっています。