military.comによれば、地方裁判所判事はアフリカ沖合で米海軍艦を攻撃したとされる6人のソマリア人に対する海賊行為の罪を却下しました。
しかし、被告らに対する他の7つの罪状については、そのままとしました。被告弁護団は先月、被告らが強襲揚陸艦の指揮をとったり、奪うことがなかったので、アメリカの国内法の海賊行為罪の定義に合致しないと主張しました。レイモンド・A・ジャクソン判事(Judge Raymond A. Jackson)は判決文の中で、「政府は国際法が定義する、公海上の海賊行為を構成する犯罪に関係する暴力や攻撃の不法行為を何も証明できなかった」「政府は約200年前の最高裁判決『米政府 vs スミス』に矛盾する、新しい法律の解釈の下で、曖昧な基準を用いようとしている」と書きました。被告ら6人は、難民を輸送していたと主張しますが、アシュランドを攻撃したことで起訴されました。スキフはアシュランドの25mm砲で破壊され、スキフの1人が死亡、数名が負傷しました。ニコラスへの類似した攻撃で訴えられている別のソマリア人被告5人の弁護士も類似した根拠をあげて、海賊罪の却下を求めています。
被告弁護人のロバート・ニグリー(Robert Rigney)は「海上での強盗行為がなかったので、海賊行為はなかったのです」と言います。リグニーによれば、政府は漠然とした国際法をあげました。「国際法の海賊行為は、何が海賊行為かについて、本質的な解釈をしていません」とリグニーは言います。彼は政府が控訴すると思っています。
ジャクソン判事は先月後半に、政府の海賊罪の告訴に懐疑的な態度を示し、検察官に対して何が海賊行為であるかを繰り返し質問しました。判決文で判事は、海賊行為のアメリカの定義は長年一貫しているものの、国際法の定義は未だに専門家の間で議論が続いていると言いました。「海賊行為の定義を国際法が論じる柔軟な方法を前提とすると、これらの国際法は本質的に最高裁の判例と矛盾し、これらの国際法を権威として法廷が依存することは、憲法審査にかなわないので、却下されなければなりません」「海上の強盗というスミスの海賊行為の定義は、一方で明確かつ信頼できます」。
昨年2月3日の外交防衛委員会で、民主党が「何が海賊行為か?」という質問をあげたとき、産経新聞が「いまさら、そもそも論か」と批判したことがありました。しかし、海賊の裁判をどこで行うべきかについて、現在対処が進められているように、この分野は案外と法整備が遅れています。
この事件のポイントは、国際法と米国法の海賊の定義が異なり、米国法の定義では起訴できないため、国際法の定義を用いたところにあります。
国際法で海賊を対象とする法律は「海洋法に関する国際連合条約」ですが、この法律の海賊の定義は、我々が「ハイジャック」と認識する犯罪行為にほとんど同じです。海賊行為は船舶だけでなく、航空機に対するものも含まれます。
第百一条 海賊行為の定義
海賊行為とは、次の行為をいう。
(a) 私有の船舶又は航空機の乗組員又は旅客が私的目的のために行うすべての不法な暴力行為、抑留又は略奪行為であって次のものに対して行われるもの
(a) 公海における他の船舶若しくは航空機又はこれらの内にある人若しくは財産
(b) いずれの国の管轄権にも服さない場所にある船舶、航空機、人又は財産
(c) いずれかの船舶又は航空機を海賊船舶又は海賊航空機とする事実を知って当該船舶又は航空機の運航に自発的に参加するすべての行為
(d) (a)又は(b)に規定する行為を扇動し又は故意に助長するすべての行為
一方で、アメリカの海賊に関する法律は合衆国憲法に起源を持ちます。連邦議会の権限を定める第1条第8節に「連邦議会は次の権限を有する」と定められており、その10に海賊にその定義があります。
(十)公海における海賊行為および他の重罪ならびに国際法に反する犯罪を定義し、処罰すること。
(駐日米大使館訳)
ここでは「何が海賊行為か」は記述せず、別の法律で定義しろと謳っています。ジャクソン判事が「米政府 vs スミス」の判例を引用するのは、この判例が実質的に海賊行為の定義とされているためです。そこで、「米政府 vs スミス」の内容を知る必要があります。
すみませんが、時間がないのでここまでにします。少し時間を置いて、まとめてから続きを掲載する予定です。