military.comによれば、アメリカ国民の10人中6人はオバマ大統領が決定したアフガニスタンへの増派に反対しています。
オバマ大統領の最初の任期の残りを決定づける中間選挙の10週間以上前に、アフガンでの戦争の拡大を支持する人は38%のみで、3月の46%から下落しました。来年中に状況が好転すると期待する人は19%だけで、悪化すると考えている人は29%でした。約49%は変化が起こらないと考えています。58%の米国民はアフガン戦争へ反対しています。
68%の人は、イラクでの戦闘を終了するというオバマ大統領の決定を支持しています。イラク戦に反対する人は65%、賛成する人は31%です。
調査は8月11〜16日に行われ、固定電話と携帯電話を使って全米1,007人に対して行われました。サンプリングエラーはプラスマイナス4.5%です。
記事は他に、様々な人々へのインタビューを掲載していますが省略します。
この記事はアフガン戦に反対する人が過半数を超えたということで、この戦争を支持する人が減ったという主旨を書いています。しかし、私はまだアメリカ人には事態を楽観視している人が多いと感じました。
約半数の米国民が、アフガンの状況は来年も変わらないと考えています。私は間違いなく悪化すると考えています。アメリカがアフガンから撤退を開始し、アフガン軍や警察の態勢は当面整わないのですから、タリバンやアルカイダが優勢になるというのは、自然な推論です。
まったく見込みがなくて強制終了させつつあるイラク戦に賛成する人も、10人中3人程度います。
戦争のような危険な事態に対して、状況が悪化しているのに態度を変えないのは、非常に危険なのです。それが分からない人が、まだかなりいるようです。米国民にはいま、何が起きているかが分かっていない人がいるのです。
イラク侵攻は長い間かかって、軍人からも反対意見が出て、撤退を決断する環境が自然に整いました。侵攻の段階から米陸軍と政権の間には軋轢が生じていました。大勢の米兵がイラクで戦死し、大金が投じられ、大量の物資が消費されました。これ以上の損失は受け入れられないという意見が大勢を占めたのです。これに比べると、アフガンでの本格的な戦争はまだ期間が短いのです。2001年の同時多発テロ直後に部隊を派遣したものの、これは現在のアフガン政府の前身「北部同盟」を支援し、タリバンをカブールから追い出すための活動でした。2003年くらいまでは、アフガンに駐留する米軍は1万人程度で、2006年になると2万人を超え、2008年までに3万人へ増加しました。この他に、民間の請負業者が何人いるのかは不明です。
ブッシュ政権はイラク侵攻の治安作戦が好転せず、国民の支持を失うと、慌ててアフガンに軸味を移しました。だから、まだアフガン戦に期待を持っている人がいるのです。アフガンからの撤退を打ち出したオバマ大統領は、この期待を終わらせ、アフガン撤退を支持する方向へ国民を誘導しなければなりません。
そこで、アフガンに最大の増派を行って、最後の作戦を行わせ、それが成功しなくても、アフガンから部隊を引き揚げます。そして、アフガンでの任務は大方成功し、治安を回復したと宣言します。実態がどうあれ、名誉ある撤退を装う必要があるのです。そうしなければ、米議会には「大統領は最高指揮官として、兵士に名誉ある結末を与えなかった」という批判が吹き荒れ、メディアがそれに追従する恐れがあります。そうなると政権は続かず、民主党がやりたい政策も実施できなくなります。
この「嘘」のためには、現実に米兵の血が大量に流されるという矛盾がつきまといます。それでも、大統領はそれをやらなければなりません。まさに、非情の決断ですが、それが米大統領の立場なのです。
戦争は矛盾の多い、円満ではない物事の解決法です。それを忘れている米国民が多すぎると、私はこの記事から感じました。もっとも、こういう問題はどの国の国民にもつきものではあります。