統合戦力軍が9月にも廃止か

2010.8.23

 military.comによれば、ノーフォークの地元で、オバマ大統領が統合戦力軍(Joint Forces Command: JFCOM)を9月よりも前に廃止するという覚書が回覧されています。

 「ハンプトン・ローズ軍連邦施設同盟(the Hampton Roads Military and Federal Facilities Alliance)」のメモは、情報源に言及していませんが、議論を呼ぶ動きが急速に発展している強力な証拠があると主張しています。「9月1日頃に、統合戦力軍の廃止を承認させるために、大統領の前に出されるために活発に準備されている総合的政策があります」と同盟の理事フランク・ロバーツは言います。バージニア州議会代表団は、法廷に訴えても廃止に反対するつもりですが、9月1日の決定は議会が休暇から戻る前に署名することを意味します。

 ノーフォーク市長ポール・フレイム(Paul Fraim)は、これによってNATOの改革連合軍(Allied Transformation Command)も追い払うことになると懸念しています。

 2つの組織は、地域総生産高の約1.2%、9億100万ドル、年間に与えられる契約額5億ドル以上に貢献しています。JFCOMだけで、ハンプトン・ローズの約5,600人の民間人や請負業者を雇用し、約7億400万ドルの年間運営費を持っています。


 ロバート・ゲーツ国防長官が先日発表した統合戦力軍廃止の続報です(関連記事はこちら)。地元が大騒ぎになっている様子が目に浮かぶような話です。

 この問題を理解するには、ハンプトン・ローズ周辺をGoogle Earthで確認するが最適です(kmzファイルはこちら)。ここはバージニア州南東部にある、海と陸が入り組んだ地域の総称です。ちょっと見ただけでも、この周辺に沢山の海軍基地や空軍基地があるのが分かります。

 ここは大西洋と南米への出口として最適の位置にあり、巨大な河口、入り江があって、港を造るには最適です。アメリカにヨーロッパ人がやって来たとき、当然、こうした場所を拠点に選んだことから、古くから植民地が開けた場所でもあります。ごく自然に、近くに首都が設けられ、これが軍隊の街としても発展してきました。だから、ここで組織を減らすようなことは、地元にとって受け入れられない話なのです。

 「改革連合軍」は、元は「大西洋連合軍」として、アメリカとヨーロッパの間の補給路を守るためなどのために設置され、冷戦終了後の2003年に組織改革で姿を変えたものです。ワルシャワ条約軍とNATO軍の全面戦争があり得た時代には、米本土からヨーロッパへの援軍や補給が確実に届くことが重要でしたが、ソ連崩壊により、その危険は消滅しました。そのために組織をよりスリムにしたわけですが、現在は司令部と訓練や調査用の部隊を置いています。指揮官は統合戦力軍の司令が兼任しているので、市長が心配するのも当然です。

 もともと、この地域の人は、ここで軍隊が縮小されるなんて、考えてもいなかったのです。守備すべき地域を持たず、主に調査開発を任務とする統合戦力軍は、テロ戦争の時代には予算を食いつぶすだけとみなされるようになったのです。当面、大騒ぎは続くでしょうが、米軍のスリム化は不可避のテーマです。

 

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