タリバンが洪水支援団体を攻撃宣言

2010.8.27

 military.comによれば、タリバンがパキスタンで史上最悪の洪水を支援している外国人に対して、その存在が容認できないとして、攻撃を行う可能性を示唆しました。

 武装グループは以前に国内の支援団体職員を攻撃しており、暴力の多発は緊急支援を必要としている800万人の人々に届くように尽力している復旧の努力を難しくします。タリバンの広報官アザム・タリク(Azam Tariq)は、支援を約束したアメリカやその他の国は本当に洪水の被害者に支援を提供することを狙っていないと言いましたが、別の動機を特定しませんでした。AP通信との電話インタビューでタリクは「陰では彼らは何かしらの意図を持っているが、うわべは救済と援助を行っている」「救済は被災者に届いていないし、犠牲者たちが援助を受け取っていないのなら、この外国人の群れは我々にはまったく受け入れられない」と言いました。彼は武装勢力が「何かが我々には受け入れられないと我々が言う時、自分で結論を出す」と暴力に訴える可能性を強く示唆しました。


 攻撃を示唆しながらも条件をつけているという、解釈に苦しむ宣言です。逆に読めば、救援が被災者に届いている限りは、タリバンは攻撃を控えるというようにも読めます。しかし、タリバンの言動をあまり細かく解釈しても意味がないことは、過去のそれらが示しています。我々の解釈とタリバンのそれはあまりにも異なり、英訳されて意味が多少変わってしまうことを考えると、あれこれ解釈しても意味はありません。

 タリクの談話は、正規軍の広報官なら言わないような曖昧な内容です。外国の支援団体は外国勢力の手先であり、イスラム教徒をキリスト教に改宗させ、堕落させることに目的があると、タリバンは以前から言ってきました。それならば、被災者が救援を得ているかどうかに関わらずに、こうした勢力はパキスタンから追い出すのが、タリバンがとるべき戦略ということになります。ところが、タリクはそう言いながらも、救援が届いていない場合にのみ容認しないと宣言したのです。こんな中途半端な考え方はありません。

 ここは、外国人の支援団体全体に対するテロを想定しなければなりません。それらには、ヘリコプター部隊を現地入りさせた自衛隊も含まれると考えるべきです。基地の中は攻撃しにくいでしょうが、飛行中や現地に着陸する際が危険です。少数ながら、タリバンが地対空ミサイルを持っていることが明らかです。被災地に着陸するために高度を下げたり、着陸中には小火器による攻撃が考えられます。自衛隊が駐屯しているムルタン(Multan) には空軍基地があり、ここが彼らの拠点だと推定できます(kmzファイルはこちら)。 この中にいる限り、内部にタリバンの密通者でもいない限り、自衛隊の宿舎を選んで攻撃するのは無理でしょう。ここから出たときにどうなるかが問題です。東部のラホールで何度も大規模なテロが起きたことを考えると、北東地域から離れているといっても安心はできません。現地の様子を、もう少し知りたいところです。


 

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