ザルダリ大統領が「アフガン戦は失敗」

2010.8.5

 military.comによると、パキスタンのアシフ・アリ・ザルダリ大統領(President Asif Ali Zardari)が、アメリカ主導の連合軍の戦いは、アフガニスタンの人心を味方につけることに失敗し、すでに敗北していると言いました。

 ザルダリ大統領はフランスのル・モンド紙のオンライン版に、連合軍はタリバンに対して「現場の状況を過小評価し、問題の大きさを意識しなかった」とし、その理由として「我々はアフガン人の人心をつかむ戦いに負けた。軍の増援ではなく、長期間の援助が必要でした」と述べました。「アフガン大衆の支持を勝ち取るために、我々は経済的な発展をもたらし、我々は彼らの生活を一変させるだけでないことを示さねばならないが、なにより彼らを向上させなければなりません」。「パキスタンとその国民はテロリストの犠牲者です」。ここ数年でパキスタン軍は約2,500人を失いました。ザルダリ大統領は、パキスタンの一部がタリバンと協力しているという主張を否定しました。


 記事からごく一部だけを要約しました。

 ザルダリ大統領が言うように、アフガン戦は失敗しており、最終的にも失敗に終わるでしょう。しかし、アメリカからすれば、タリバンと協力するパキスタンに言われたくないというところでしょう。パキスタンは同国の情報部とタリバンが関係していないことを明確に示す必要があります。テロとの戦いで、パキスタン軍に被害が出ているとしても、それだけでパキスタンの無実性が証明されるほど、この地域は単純ではありません。ザルダリ大統領は批判を口にする前に、どれだけの対策を行ったかを示すべきです。パキスタン軍の犠牲数だけでは十分ではありません。

 前から指摘しているように、オバマ大統領が決定した増派は、それでアフガン戦を成功に導くものではなく、むしろ被害を増やします。しかし、そこまでしないと、米国内の最も保守的な人たちが撤退すべきだと考えるようにはなりません。戦争では無駄のない用兵が理想ですが、実際には、用兵の一部は不合理になされます。これは敵の作為によってなされるのではありません。敵に不合理な用兵を強いることは戦略・戦術のポイントですが、味方の無意味なアイデアによって失われるものも多いのです。特に、撤退を決めるには、かなりの理由がないと納得しない人たちが残ります。太平洋戦争でも、昭和天皇が終戦を言い出すまでに、かなりの時間を要しました。

 ザルダリ大統領の主張は間違ってはいないものの、傍観者的で、建設的とは言えません。彼が言うべきなのは、パキスタンがテロで混乱することから、インドでもテロが激化し、もともと対立している両国間の関係が悪化するのを、どう防ぐかです。パキスタンとインドの対立も、本気で対立しているのかが疑わしいのに、お互いに核兵器を持ち、相手を威嚇するという、分かりにくい状況にあります。そこで、アルカイダやタリバンが参入することで、どんな問題が起きるか分からない点が気になるのです。インドではすでにムンバイで大規模なテロ事件が起きていますし、列車を狙った爆弾事件もありました。

 不透明すぎる状況を、ザルダリ大統領は明快な方向へ持っていく努力をすべきです。

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