military.comによれば、バラク・オバマ大統領は、グアンタナモベイ収容所を無人にするという公約がまだ達成されておらず、数少ない果たされていない公約だと認めました。
同時多発テロ記念日の前日にホワイトハウスで行われた記者会見で、オバマ大統領はグアンタナモベイ収容所を現状維持するコストは、米国内で最も警備が厳重な「SuperMax」型の刑務所を維持するよりも、遙かに高額だと言いました。国防総省の報告によれば、グアンタナモベイ収容所の年間費用は1億1,600万ドルです。現在176人のテロ容疑者に対して、一人あたり650,000ドル以上かかっています。連邦刑務所に囚人を交拘留する費用は年間5,575ドルです。「SuperMax」刑務所の費用は、追加の警備のために、もう少しかかるといいます。
就任後すぐに、オバマ大統領は約260人の拘留者を1年以内に無人にする行政命令に署名しました。1月22日の閉鎖期限は過ぎてしまいました。「知ってのとおり、我々は多くの選挙公約を果たしました」「我々が果たしていないことのひとつは、グアンタナモを閉鎖することです。私はすぐにでも閉鎖したいと望みます。我々は期限を逃しました。それは挑戦していないからではありません。その政治問題が困難だからです」とオバマ大統領は言いました。議会は、イリノイ州の連邦刑務所を購入し、「SuperMax」刑務所に造り替え、グアンアタナモベイの拘留者を収容して、軍事裁判にかけるというホワイトハウスの努力を妨げました。
大統領は、グアンタナモベイ収容所に拘留されている同時多発テロの共謀犯カリド・シーク・モハマンド(Khalid Sheik Mohammed)と4人を米国内で裁判にかける意向も述べました。
グアンアタナモベイ収容所は、対テロ戦の汚点であり、オバマ政権が掲げた公約の中でも、ブッシュ政権の誤りを正す重要なポイントです。
この収容所は、テロ犯を裁判にかけるまで拘置するのではなく、再びテロ事件を起こさせないために隔離するために作られました。このため、近代国家が例外なく掲げる「容疑者が迅速な裁判を受ける権利」が無視されてきました。また、無関係の人までが容疑をかけられて拘留されました。さらに、テロ容疑者に対して、肉体的、精神的な拷問を繰り返しました。これについては、米国内の法律専門家からも批判の声があがりました。国家の安全のために、何でも許容すれば、それはいずれファッショにつながるからです。この問題を描いた映画「マーシャル・ロー」は是非とも観賞して欲しい作品です。この作品の中に、前述の3点がすべて登場します。私は拙著「ウォームービー・ガイド」の中で、この作品は未来を先取りしたと書きました。対テロ戦は、この作品で描かれた社会構造のままであり、同時多発テロが起きる前に、こうした作品が製作されたことは驚異的です。
オバマ大統領が収容所の閉鎖に取りかかると、テロ容疑者を釈放すれば、再びテロ事件を起こすという主張がなされました。また、刑事裁判ではなく、軍事裁判にかけるべきだとの主張もあります。
私は、当然、テロ容疑者は早急に裁判にかけるべきだと考えます。刑が重ければ、終身刑や長期刑などの重刑が科されることもあり、刑が終わる頃には老人になっていることでしょう。アメリカは、こうした大事件に遭遇すると、常にやり過ぎる傾向があります。第2次世界大戦で、日系人を警戒して収容所に隔離したことも、その一端です。一番困るのは、アルカイダを壊滅する戦略を考えることが最優先されるべきなのに、自分がどんなに愛国者であるかを示すことに国民の関心が向いていることです。そのために、まともな戦略論が無視されるという、重大な結果を招きました。現状を招いたのは、アメリカ人がこうした感情的な反応をしたためです。
こうしたレベルから脱却するためにも、グアンタナモベイ収容所の問題は片付けるべき時に来ています。いや、その時をすでに過ぎていると言うべきでしょう。