military.comがアフガニスタン南部ザリ地区(Zhari)でのタリバン掃討作戦の模様を報じました。最近、戦闘に関する情報が少ない中、これは貴重なレポートです。
米軍は今、川沿いのブドウ園、ザクロ畑、大麻畑がある「グリーンゾーン」と呼ばれる地域で、タリバンが集中する場所です。イラクではバグダッドの中枢地域を指す言葉でしたが、ここでは別の意味を持っています。ここでは、無人偵察機がタリバン戦士が検問で、誰がアメリカ人を支援しているかを見つけるために検査と尋問を行うのを観測するほど自由に動いています。
中隊指揮官ブランド・オージュ大尉(Capt. Brant Auge)は、4月に5台の車両を道路脇爆弾で失って以来、前哨基地の近くにある1本の道路を移動していないと言います。第101空挺師団の兵士は5月に、武装勢力がカンダハル市を攻撃するのを妨げるために、この地域に殺到し始めました。一部はパキスタンから来た武装勢力は数百人の戦士を送り込み、攻撃を激化させました。16年前にムラー・オマル師の過激なイスラム運動が誕生した、この地域でのタリバンへの同調と支援は強力です。オージュ大尉は、タリバンはこの地区に影の法廷と影の政府を設置したと言います。住民は、重装備の米兵を恐がるか、タリバンの懲罰を恐れるか、武装勢力に共鳴するかの理由で、米軍と話そうとしません。
ザリ地区の地方政府はほとんどワンマンショーです。責任者のカリーム・ジャン(Kareem Jan)は狙われています。彼は5月にこの仕事について以来、少なくとも3件の暗殺を生き残りました。先週は、地域を横切る主要な舗装道路上の車列がガンマンの待ち伏せを受け、護衛1人が死亡しました。ここ数ヶ月、米軍指揮官は、彼らは、木を切り倒し、武装勢力が戦う場所を破壊して、1号線の待ち伏せを減少させたと言います。道路の北側は開けた砂漠で、武装勢力が隠れるのは困難です。南側にはグリーンゾーンがあり、多くの村をタリバンが支配しています。
カンダハル市の西部、北西部のアルガンダブ川(the Arghandab River)をまたがる青々とした帯の豊富な下生えは、ゲリラ戦士を隠し、米兵はよく影の中に発砲の閃光を見るだけです。ブドウ畑は、効果的な戦闘位置として代用できる4フィート高(1.2m高)の泥の塀でつながっています。陸軍の工兵は、ゲリラが遮蔽に使う木を切り倒すためにチェーンソーを使っています。ブルドーザーや爆薬も使われています。タリバン戦士はいくつかの場所に防御用の小さな盛り土を持ち、家屋の回りに感圧式の爆弾を設置しました。彼らは近隣の山の中ではトンネルを用います。米兵は井戸の中に武器や人を置くのに使うと考えられる棚を発見しました。
ニック・スタウト大尉(Capt. Nick Stout)は、ここが天に突き出したジャングルだと言います。「彼らのねぐらがあり、武器を貯蔵し、人員の輸送に使う土地がある場所です」。幹線道路を指出して、スタウト大尉は「この道路はタリバンに所有されています」と言います。オージュ大尉がいる場所を含めて、前哨基地は緑地帯に点在しますが、周囲をパトロールするのは制限され、頻繁に攻撃を受けています。
土曜日に、センジュレイ村(Senjeray)南部の米軍は、一連の家屋に籠もる武装勢力を観測しました。銃声が峡谷に響き渡ると、米兵は航空支援を要請しました。A-10対地支援機、カイオワ観測ヘリコプター、アパッチ攻撃ヘリコプターが繰り返し、標的を地上掃射するために急降下しました。500ポンド爆弾と1,000ポンド爆弾が巨大なマッシュルームを戦闘地域の上に残した後で、戦闘は終わりました。約14人の武装勢力が死亡しました。
しかし、武装勢力を峡谷から掃討するのは、難しいと分かりました。NATO軍はザリ地区での大規模な掃討作戦を2006年と2007年に行いました。初期においては成功したものの、タリバン戦士は少しずつ戻ってきました。
南部でNATO軍を指揮するイギリス軍のニック・カーター少将(Maj. Gen. Nick Carter)は、ザリ地区での目標の一つはマクアン村(Makuan)で、数日中に掃討できると言いました。カーター少将は軍がIEDが仕掛けられた一帯を突破し、村に接近したと言います。記事は「進展は明らかに遅い」と書いていますが、カーター少将は、我々が過去に達成したよりも僅かに遠いだけと言いました。
記事が書いているのと同じことを、私も感じました。明らかに作戦は遅れています。カンダハル市中心部からマクアン村までは20km以上あります。まだ、都市部には至っておらず、この調子では、カーター少将が先日宣言した、11月までのカンダハル掃討はほとんど無理です。(関連記事はこちら)
Google Earthでそれぞれの位置を確認してみて下さい。kmzファイルをダウンロードして、Google Earthで開くと、問題点は一目瞭然です(カンダハル市・マクアン村・センジュレイ村)。周辺の写真も数点ありますので、参考にしてください。「レイヤ」の「道路」のチェックマークをオンにすると、1号線の位置も分かります。
ついでに、グリーンゾーンの中心部を流れるアルガンダブ川を上流へ遡ってみてください。上流にダムがあるのが分かります。このダムが豊富な水を蓄えているので、下流で農業が可能になっているのです。
確かに、1号線の北側は砂漠で、山につながっています。米軍はこの辺の山地に前哨基地を作り、タリバンの動きを監視し、計画的に掃討作戦を実行しているのでしょう。1号線北側の山地とその東側にある小さな山に挟まれた回廊部分を、IEDを除去しながら、ゆっくりと前進しています。 小さな山の左側にもカンダハル市へ行く道路があります。ここも進撃路として向いていますが、記事では触れられていません。カンダハル市とザリ地区の武装勢力の連絡を絶つには、こちらでも前進することが必要です。
センジュレイ村を過ぎて、アルガンダブ川を渡ると、農地が減り、住宅地が増えてきます。こうなると進撃速度はさらに落ちると見込まれます。IEDはより多く仕掛けられますし、銃撃できる場所も増えます。農村地で現在の進撃速度なら、11月までにカンダハル市からタリバンを追い出すのは、ほとんど無理です。
作戦のポイントは、カンダハル市の西の入り口を出来るだけ早くに押さえることです。ここは複数の山地によりタリバンの移動が制限されます。山地は隠れて移動するのが困難ですから、ここを24時間監視して、移動する者を例外なく銃撃することで、移動不能区域にするのです。道路には障害物を置いて車両を通行できなくして、徒歩で移動する者は攻撃ヘリコプターなどで殺害します。すると、細い1.2kmほどの隘路しか、移動経路がなくなります。これによって、ザリ地区とカンダハル市の武装勢力を分断するのです。
しかし、問題はカンダハル市の面積にあります。住宅地が広すぎて、掃討にはさらに2〜3ヶ月はかかるように思われます。住宅地が広がると、戦闘の内容が次第に市街戦の様相を帯びてきます。こうなると、区画の支配権を巡って、激しい戦闘が繰り返されます。
仮にカンダハル市内を占領したとしましょう。住宅地を掃討しても、タリバンは南東部の農村地帯へ下がり、ここから市内を攻撃し続けられます。このように一方から圧迫しても、敵が別の場所に逃げられるような作戦が効果をあげることは難しく、好手とはいえません。格言の「糠に釘」「暖簾に腕押し」という奴です。
タリバンはカブールを追放されても復活しました。タリバンがアフガン政府の和平に応じる理由は、今のところ見出せません。結果はともかく、オバマ大統領は勝利を宣言して、アフガンから撤退するのです。勝てない場所で戦いを続けないことです。今後、カンダハル戦がアフガン戦の天王山とする報道が続出し、成否を論じる報道記事が増えるでしょうが、そうした記事を信用しないことです。