小沢・海兵隊不要論に防衛省が反論

2010.9.6

 3日付けの産経新聞が、「小沢氏『海兵隊不要』に防衛省困惑 事実誤認も数々」という記事を報じました。

 その中で特に気になるのが、次の部分です。

 「現実にいるのは2千人(に過ぎない)」。小沢氏は在沖縄海兵隊の兵力数をこう説明したが、実態とはかけ離れている。米国防総省の資料によると、日本駐留の海兵隊は約1万7千人で、岩国基地(山口県)の約3千人を除く約1万4千人が沖縄に駐留。このうち常時1千人程度がアフガニスタンとイラクに派遣されているが、1万3千人程度は沖縄にいる。

 これまで沖縄県は沖縄に常駐している海兵隊は12,000人程度としてきました。小沢氏の2,000人説には驚きますが、産経新聞の13,000人は多すぎるという印象です。実際にどうなのかを調べてみました。どの部隊がイラクやアフガニスタンに派遣されているかを示す直接の資料は見当たりませんので、様々な情報から推測してみます。

 海兵隊の主張では、沖縄にいる海兵隊は18,000人です。第31海兵遠征部隊は2,200人が、キャンプハンセンにいます。主力の第3海兵師団は、第12連隊、第4連隊、第3偵察大隊、戦闘強襲大隊が沖縄におり、ハワイに第3連隊がいます。その他、海兵隊の航空弾やその他の支援部隊がいますが、まずは人数が多い歩兵部隊の数を考えます。

 キャンプシュワブの第4連隊は、現在は第3海兵師団の隷下ではなく、カルフォルニア州に駐屯する第1海兵師団に編入されています。そのためか、第4連隊の公式サイトはなくなっています。第4連隊の第1大隊は第1海兵師団第1海兵連隊、第2大隊は同第5海兵連隊、第3大隊は同第7海兵連隊に所属しています。Wikipediaの説明では、この改編は歴史的な理由で行われ、第4連隊は合衆国内やハワイでジャングル戦用のホスト大隊として活動しているということです。第4連隊がキャンプシュワブにいないとすれば、これだけで3,000人程度はいないことになります。

 さらに、marinecorpstimes.comの記事によれば、戦闘強襲大隊の3等軍曹が今月2日にヘルマンド州で戦死していることで確認できます。部隊全体が派遣されているのか、応援として一部が派遣されているのかは分かりませんが、部隊全体の派遣なら1,000人程度が沖縄にいないことになります。

 以上の情報だけからは即断できないものの、沖縄には9,000人がいると推定でき、小沢氏が言う数字にはなりません。時間がなくて、簡単な確認しかできていないので、もっと正確な情報を持っている方がいたらご連絡ください。沖縄の方で、海兵隊の動きが分かる方がいたら、是非連絡ください。小沢氏がもっと重要な情報を持っている可能性もあります。

 産経新聞の記事は、1,000人程度がイラクとアフガンに派遣されているという資料から単純な引き算をして、13,000人が沖縄にいるとしていますが、これは常駐の数と実数の区別がついていないのです。仮に、13,000人が沖縄にいるとしても、様々な活動で部隊は移動します。訓練や海外訪問、災害救助で動く人数を考えると、抑止力として数えられるのは、もっと減ることになります。中国が突然日本を侵略した場合の即応能力としての抑止力なら、海兵隊員は沖縄に張り付いている必要があるはずですから、大事なのは実数なのです。



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