military.comによれば、フロリダに拠点を置くキリスト教会、ドーブ世界奉仕センター(Dove World Outreach Center)が、9月11日の同時多発テロ記念日に、イスラム教の聖典コーランを燃やすイベント「Burn a Koran Day」を開催しようとしています。
ドーブ世界奉仕センターの主任牧師で、「悪魔のイスラム教(Islam is of the Devil)」の著者、テリー・ジョーンズ(Terry Jones)は、このイベントは激しく反対されるでしょうが、それがこのイベントのポイントだと言いました。「我々はこの行動を、我々が憎むべきままに憎むイスラムの教義とイデオロギーについて警告するのに用いています」。ジョーンズは書面による声明で、この国は彼らの恐怖や脅しによってコントロールされないというメッセージをイスラム急進派に送りたいと述べました。「アメリカがアメリカであることに戻るときが来ました」。
しかし、NATO事務総長アンダース・フォー・ラスムッセン(Anders Fogh Rasmussen)はワシントンで記者に、コーランを焼くことは我々が支持し、戦っているすべての価値に対する大きな矛盾だと述べました。「私は、それが無礼な行動であると考えます。私は人々に、異なる人々の信仰を尊重し、礼儀正しく行動するよう心から訴えます」。海外戦役復員軍人会(Veterans of Foreign Wars)の代表リチャード・ユーバンク(Richard Eubank)は、この熱烈なイベントは宗教の自由に対するアメリカ人の配慮について、間違ったメッセージを送ると言いました。「憲法修正条項第1条は、牧師やその支持者の抗議する権利を守るかも知れませんが、この利己的な行為から得るものは全くなく、すべてを失います」「我々の戦争は無差別に、呵責なしに殺す少数の宗教的過激派に対するものです。同じように少数のアメリカ国内の宗教的過激派が戦争を拡大するのを認めないようにしましょう」。
記事にはデビッド・ペトラエス大将のコメントも載っていますが、国内記事で紹介されているので省略します。さらに記事は、過去に起きた類似する事件と、このイベントに対する抗議活動について書いています。
2005年、ニューズウィーク誌が、グアンタナモベイ収容所で、尋問官が収容者に証言させるために、コーランのコピーをトイレに置き、便器に流したと報じた記事に怒ったアフガン人15人が死亡し、多数が負傷しました。ニューズウィーク誌はあとで記事を撤回しました。
月曜日に、数百人のアフガニスタン人が、カブール市のモスクの外に集まり、アメリカ国旗と同教会の牧師をかたどった人形を焼き、「アメリカに死を」と叫びました。参加者は米軍の車列に石を投げつけましたが、解散するように命じられました。また、数千人のインドネシア人のイスラム教徒が、ジャカルタの米大使館と他の5都市に集まって、イベントに抗議しました。カブールの米大使館もこのイベントを非難する声明を出しました。
同教会は昨年「悪魔のイスラム教」と書かれたTシャツを制作しました(通販で購入できます。こちら)。同教会はたき火を行う許可を却下されましたが、イベントは行うと言っています。
国内でも大きく報じられているので、御存知の方もいることでしょう。この意味のないイベントは是非とも中止させられるべきです。理由はペトラエス大将などが述べているとおりです。この記事では、退役軍人会からも批判が出ていることを紹介しています。こうしたイベントはイスラム過激派の憎悪を煽り、戦地の兵士を危険にさらします。
アメリカのキリスト教会には、感心するような活動をしているところもありますが、中には理解しがたいところもあります。この教会が、まさにそれです。このように、戦争中には銃後で余計な活動を行う人が必ず出てきます。彼らは自分は戦地に行きませんが、手軽な活動をやって愛国者ぶろうとするのです。私はこういう人たちが起こす問題を「銃後の狂騒」と呼んでいます。こうした活動は戦争を終わらせるどろこか、悪化させることしかしません。
こうした活動に異常に熱中する人たちも出てくるので、戦時には要注意です。日本も小泉政権がイラク派遣を決めたとき、これに近い状態の人を直接見かけました。
こうした活動は、常に最も保守的な形をとるものです。国家が外国勢力と対決し、圧力下にある時、必ず保守的なイデオロギーが復活します。ナチスドイツはキリスト教以前のドイツの古代神を、日本も神道を持ち出しました。今回の事件も、古きアメリカで保守派の牙城であるフロリダ州で起きています。
しかし、一般人もそれに近い人たちがいるようです。この記事にリンクしているアンケートでは、このイベントを支持する人が53%、支持しない人が39%、分からない人が8%でした。私が最初にアンケート結果を見たときは支持する人が60%もいました。調査は継続中で、完了するまでは変化し続けます。
最近、ニューヨークの世界貿易センタービル跡の近くに、イスラム教の教会「モスク」を建設する計画が浮上し、物議を醸しているという報道がありました。オバマ大統領も建設賛成を表明したものの、世論の強さに撤回を余儀なくされたといいます。私はモスクは建設すべきだと考えます。アメリカ人の寛大さを示すには絶好の機会です。「グラウンド・ゼロ」を聖地にしてはならないのです。そこを象徴的な場所にすれば、そこから復讐の輪が広がります。
日頃から戦争を研究していれば、こういう行為がいかに馬鹿げているかが分かります。こうした行為はノイズにしかならず、軍事的な観察眼を曇らせるのです。
ここ数日、興味深い記事がいくつも出ていますが紹介し切れていません。時間があれば、あとでまとめて書きたいと思います。