サドル師がアメリカへの抵抗を呼び掛け

2011.1.10


 military.comによれば、シーア派指導者ムクタダ・サドル師(Muqtada al-Sadr)が4年間の亡命後はじめての公の声明で、「あらゆる方法を用いて」アメリカに抵抗せよと支持者に呼びかけました。

 大勢の礼拝する群衆に向けられた声明は、ヌーリ・アル・マリキ首相(Prime Minister Nouri al-Maliki)に今年末までにすべての米軍がイラクから撤退するのを確実にすることも求めました。さらに彼は、もしイラク政府が国民に治安と行政サービスを提供しないなら、「我々には政治的な手段がある」と警告しました。サドル師はアメリカ、イスラエル、イギリスを「我々に共通する敵」と呼んで、群衆を熱狂させました。

 しかし、彼は2003年にイラクを侵略した彼の主敵、アメリカへの最も激しいコメントは留保しました。

 「我々がアメリカを拒絶することを全世界に知らしめるのです。占領者はいらないと」と彼は35分間の演説の中で言いました。「我々はイラク人を殺しません。我らの手はイラク人を殺しません。我々は占領者だけをすべての抵抗の手段を使って狙います」。
 米軍は年末までにイラクを去りますが、約50,000人の米軍は残存します。これがマリキ首相が少数の米軍が残るよう要請するのではないかという憶測を呼んでいます。

 「新政府は占領者を国外へ行かせるために、適切な方法で動かねばなりません」「我々は政府がこの件について誓約するのを聞いており、我々は政府が筋を通すのを待っています」とマリキ師は言いました。


 私の予測と違い、サドル師はアメリカを攻撃するよう指示したわけですが、本当にそれを実行するかどうかはまだ不透明だと、私は考えます。

 最初の演説でこの程度のことを言うのは、ごく自然な話です。そうでなければ、支持者たちはサドル師が変節したと考えるでしょう。

 「政治的な手段」とか「政府が筋を通すのを待つ」といった表現からは、当面は成り行きを見守る態度が感じられます。

 もっとも、イスラム教徒の言動を、我々のそれと同じように考えるのは間違いの元です。過去に、彼らの言動と実態が大きく異なったこともありました。サドル師が米軍を攻撃し始める可能性もあります。

 そうでないとしても、イラクに対するイランの影響力が強まることは避けられず、アメリカがスンニ派を支持して、シーア派と戦うような未来もあるかも知れません。言われ続けていることですが、イラクの未来は不透明なのです。



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