米陸軍が抗マラリヤ薬を使用禁止に
military.comによれば、米陸軍が40年間使用してきた抗マラリア剤が副作用を起こすという理由で使用が禁止されました。
これは、メフロキン(mefloquine)が年に約800,000人を殺害した蚊が媒介する病気の予防として世界中で使われ、精神的、肉体的な副作用を引き起こしたという懸念によります。
「メフロキンは有害な薬です。危険なので、何年も前に葬られるべきでした」と、この薬が脳に潜在的に有害だという研究を発表した伝染病学者で陸軍少佐のレミントン・ネヴィン医師(Dr. Remington Nevin)は言いました。
マラリアを起こしやすいアフガニスタンに大勢の兵士を派遣したにも関わらず、過去3年間、陸軍は約75%のメフロキンを削減しました。量の減少は2009年に国防総省高官による2件の命令に続きました。陸軍の軍医総監はその使用を特別な状況に制限しました。しかし、他の軍はメフロキンの支持を続けています。
陸軍の研究者はベトナム戦争の終わり頃にメフロキンの開発をはじめ、1990年代初期に「ラリアム(Lariam)」の商標名で「ロシュ製薬(Roche Pharmaceuticals)」によって認可された後で広く使い始めました。それは初期の治療法、クロロキンに対する耐性をつけた蚊がいる地域で、1週間に1錠だけで機能するために、戦闘部隊で支持されました。
長年、陸軍は退役軍人の批判を軽視して、そのマラリアに対する抵抗力は小さなリスクを容易に上回ると主張しました。一部の使用者は、錠剤が、悪夢、鬱、パラノイア、幻聴と完全な神経衰弱まで、程度の異なる精神医学的な症状を引き起こすと不満を言いました。陸軍の文献は、こうした症状は2,000〜13,000人に1人の割合で起きると言います。ネヴィン医師を含めた批判者は、人数は遙かに多いと主張します。家族たちは薬が彼らが愛する者の自殺の原因だとさえ主張しました。
退役海軍大佐ゲーリー・フォスター(Gary Foster)は、2008年から2009年のメフロキン服用の影響もあって軍歴を縮めたと言いました。「私は短期間の記憶喪失になりはじめ、私が以前にしたことを思い出せませんでした」「私はさらに不安な状態にもなり、私は自分の人生のために、理由を言うことができません」。
2009年2月、陸軍軍医総監、エリック・シューメーカー(Surgeon General Eric Schoomaker)は、兵士が一般的な抗マラリア抗生物質、ドキシサイクリン(doxycycline)に耐えられない場合にだけ使うべきだという方針覚書を医師に送りました。2009年9月、健康問題を監督する国防長官副官だったエレン・P・エンブレイ(Ellen P. Embrey)はシューメーカーと類似した書簡を送りました。この時は全軍に対して指示されました。反メフロキンのグループはこの覚書に飛びつきました。「私は驚きました」と退役海軍中佐のビル・マノフスキー(Bill Manofsky)は言いました。彼は2002年にクウェートでラリアムを服用した後で平衡感覚に永久的な損傷を被り、薬の継続的な批判者でした。「それは喉を傷めるまでハリケーンの中で叫ぶようなものです」「我々は我々が正しいことを知っています」。
ロシュ製薬はジェネリック薬と代替治療の有効性のためにラリアムを売るのを2008年に止めたと言います。2008年に陸軍はこの薬の8,574単位を分配しましたが、2010年には2,054単位に落ち込みました。同時に、陸軍はアフガンに派遣された兵士の数を反映して、ドキシサイクリンの処方を5倍に増やしました。
出費は似たパターンを辿り、国防総省は2009年に1年分の10,000単位に足る180万ドルのメフロキンを購入しましたが、昨年は150万ドルに落ち、今年は今のところ50,000ドルを使うだけです。錠剤がどれだけ分配されたかは不明です。
海軍と海兵隊は実際にメフロキンの処方を、2008年に1,200単位から昨年の2,000単位近くへと、過去3年間にわたって僅かに上昇させました。海外での処方は頻繁に数えられないため、数字はさらに高まる可能性があります。
この薬をパイロットに使うことを長らく禁じてきた空軍は、過去2年間でその使用を減らしてきました。海軍予防医学部を指揮するクリストファー・クラーゲット大佐(Capt. Christopher Clagett)は、海軍の見解ではメフロキンはマラリア予防の最善策の一つだと言いました。彼はメフロキンは最も効果的な薬、マラロン(Malarone)よりも安く、ドキシサイクリンよりも効くことが多いと言いました。「立証されていない慢性効果の申し立てのために効果的な抗マラリア薬を捨てることは軽率で、隊員をマラリアのより大きな危険にさらします」「注意深く選択的な不完全な使用を続けるよりは、それでも効果的で価値のある薬物治療です」。
8月にダイアン・ファインスタイン上院議員(Sen. Dianne Feinstein)は国防総省と復員軍人援護局の長官に書簡を送り、薬物使用の保護手段を強化するように訴えました。復員軍人援護局は先月、同局のウェブサイトのアドバイス・セクションからメフロキンを削除する一方で、薬物の副作用に関する最近の研究を調査します。
ネヴィン医師はメフロキンを公に攻撃し、「恐らく軍隊に最も不向きな薬」と呼んで上官を怒らせました。彼は、その副作用は戦闘に関連したストレス障害と極めて似た症状で、神経上の問題だと診断することを難しくすると指摘します。「それは、徐々にそして、不本意ながら悲劇的でおそらくは破壊的な、数十年間の連続した誤りと過失を受け入れた軍隊の官僚主義の物語です」。
ネヴィン医師の意見がすべてを代弁しています。
海外に派遣される隊員は、派遣先でかかる恐れがある伝染病の薬を事前に処方されるものです。しかし、こうした予防措置が逆効果を生むことがあります。たとえば、兵士が注射を打った直後に気分が悪くなるといった問題です。予防注射の薬剤や投与方法に問題があることは、民間の医療でも絶えず聞かされる問題です。
軍隊はこうした薬の大規模ユーザーの一つです。40年間も危険性の高い薬が使われ続けたことは、こういう軍隊の悪しき面そのものなのです。
軍隊は大量に物資を消費します。それは軍隊が大手企業と接触することを意味し、大きな利権を握っていることを意味します。軍高官が民間企業に天下るためにも、大手企業とは仲良くしておいた方がよく、その結果、欠陥のある装備品が見つかっても、あえて問題視せず、放置される場合があります。
こうしたことを防ぐには「小うるさい発言者」が軍隊内にいるべきなのですが、このように理想的な解決が図られない場合も多いかも知れません。また、米軍ではこういう問題が公表されますが、闇に隠してしまう軍隊は世界中にあります。イスラム国では、将校が兵士に装備を売りつけたりするほどですから、この種の問題が簡単に解決できるとは思えません。我々は世界の軍隊を見る時に、こういう視点に立たなければなりません。
当然、日本人は我らが自衛隊ではどうなのかという疑問を持つべきです。
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