米軍は戦友虐待を許容せず

2011.12.23

 military.comがダニエル・チェン二等兵(Pvt. Daniel Chen・この記事から名前が「Danny」から「Daniel」に変更されています)殺害事件の続報を報じました。

 米国防総省当局者は、同僚がアフガニスタンの衛兵所で自殺する直前に彼を虐待したという申し立ての最中に、8人の陸軍兵士を別の基地に移送したと言います。兵士たちは19歳のチェン二等兵の死に関して、職務怠慢から過失致死に至るまでの嫌疑を受けています。チェンの親族は、彼は訓練中に数週間に及ぶ人種上のからかいと中傷と耐え、それからアフガンに派遣後にしごきにさらされたと言います。

 国防総省広報官、ジョン・カービー大佐(Navy Capt. John Kirby)は、軍隊は同僚を虐待する兵士に対して許容度ゼロの態度を取っていると言いました。「それは我軍に必要とされます。それに対処するための司法システムがあります」「虐待は軍隊では許容されません。それが見つかり、証明されれば、対処がなされます」。

 容疑者たちはまだアフガンにいますが、任務を解かれ、別々の基地に監禁されていると軍は言います。次のステップは軍事裁判に必要な証拠があるかを決定するための聴聞です。この手続きはアフガンで行われる見込みです。2件の最も重い起訴、非故意故殺は最大10年、過失致死は3年の禁固刑です。

 ニューヨークの中国人街での記者会見で、彼の両親を代理する活動家エリザベス・オーヤン(Elizabeth OuYang)は、チェンはフェイスブックと電子メールでからかいに対して不満を述べ、従兄弟と日記の中で話していたと言いました。陸軍は彼の良心に日記の抜粋を公開しました。ジョージアの基地の同僚は彼をアジア風のアクセントを誇張して「チェン!」と呼んでからかいました。彼らは彼をアクションスターになぞらえて「ジャッキー・チェン」と呼びました。彼はニューヨーク生まれなのに、繰り返して中国人だと呼んでからかいました。

 戦地派遣後に虐待が始まりました。兵士たちは彼を床の上で引きずり、石を投げつけ、逆さまに吊す間に口に液体をふくませたとオーヤンは言いました。10月3日、チェンは衛兵所で自傷したような銃創のある、死んだ状態で発見されました。「自殺か他殺のどちらでも、ダニーを虐待した者は彼の死に責任があります」とオーヤンは言いました。


 昨日の報道の続報です。前半部分から事件に直接関係のある部分を抽出しました。

 チェンの死因は自殺だったようです。衛兵所が現場なら、そう考えるのが自然ですが、検死結果からも自殺かどうかはある程度は分かります。いずれにしろ、遺品の確認が始まった段階で日記の記述がみつかり、それによって捜査が始まったものと考えられます。非故意故殺と過失致死という起訴内容から、私は容疑者が殺害も行ったものと考えましたが、そうではなかったようです。

 非故意故殺は故意ではない殺人を意味し、過失致死は誤って行われた殺人です。どちらも似ていますが、微妙に意味が違い、非故意故殺(単に故殺という場合もあります)は日本の刑法にはありません。これらの罪名があるから容疑者が殺害行為を行ったと私は思ったのですが、暴行の程度が大きい場合、自殺に関しても適用されるのかも知れません。あるいは、自殺という判断が最終的結論ではないのかも知れません。

 チェンの体内から摘出された弾丸の検査、検死による発砲の距離や方向の特定などから、自殺かどうかはかなりの確度で特定できます。この調査をすり抜けるような仕掛けを衛兵所で行うことは、かなり困難です。

 自殺と結論された場合、容疑者たちは虐待に関連する罪だけで起訴されるかも知れません。しかし、被害者の自殺を招いたこと、上官の中尉が指揮官による処罰ではなく、軍事裁判に起訴されていることから、暴行を働いた被告らの責任は重く、追求は最大級に厳しいものとなるでしょう。彼らは下士官と兵卒なので、有罪なら2等兵に降格の上、不名誉除隊で退職金も恩給もなく、刑期を終えて軍刑務所から放り出されることになります。

 米軍は真面目に軍務を務めた者には、かなりの恩恵を無料で授けます。だから、除隊後に備えて勉強を欠かさない者も多いと聞きます。しかし、チャンスがありながらも、それを活かせない者は、目の前のチャンスに気がつくことすらないものです。容疑者たちはそれを失って初めて、愚かだったことに気がつくのです。

 その内に容疑者たちの顔写真が記事に載るでしょう。全員が白人だったら、本当にこれが人種差別による事件だったことが明らかになります。



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