食い違う米・パ軍の主張

2011.12.25

 military.comによれば、書面の上では米軍主導のISAFとパキスタン政府の関係は礼儀正しいものですが、実際には疑念で充満しています。

 記事は米軍が特殊作戦員が降下する前にパキスタン軍を無視した点を指摘しています。その部分を紹介します。

 ISAF国境近くで軍が活動する時、パキスタン軍に大まかな言葉で警告を出す習慣を身につけました。しかし、11月25日、ISAFは自身のガイドラインに従わず、米軍とアフガニスタン軍の特殊作戦要員が山岳地帯へ飛ぶことを告げませんでした。「これは通常、彼らに送られるはずで、大まかな位置を与えます」と調査を担当したスティーブン・クラーク准将(Brig. Gen. Stephen Clark)は言いました。「この事件では、それは事前に彼らに送られませんでした」。クラーク准将は、米当局者が過去にパキスタン軍にISAFの計画を読み取られた苦い教訓の後、秘密にしておくことが正しいと感じていると言いました。

 military.comが米軍の報告書に対するパキスタン軍の反論を掲載しています。

 パキスタン軍広報官、アザル・アッバス少将(Maj. Gen. Athar Abbas)は、パキスタン軍が米軍とアフガン軍に先に発砲したという報告書の主張を否定しました。金曜日のAP通信のインタビューで彼は、パキスタン軍は同盟軍のヘリコプターが戦闘を始めた後で応酬しただけだと言いました。彼はパキスタンが攻撃を受けた2ヶ所の基地の位置をNATO軍に通知するのに失敗したことも否定しました。

 アッバス少将はアメリカが死亡した兵士への謝罪を拒否したことに驚きと不満を表明しました。彼は犠牲者の家族へのアメリカの補償金支払いを拒否し、軍には自前の福祉制度があると言いました。「誰も補償に興味を持っていません」「英霊のために金を受け取ることは我々の軍の文化ではありません。それは嫌悪されます。我々は自分自身の面倒を見ます」。

 クラーク准将は、米軍はパキスタン軍の比較的新しいパキスタン軍の前哨基地(灰色の石を積み重ねて造られた予備の構築物)が国境に建設されたことを知らなかったと言いました。アッバス少将は、パキスタン軍が明確にモハマンド部族地域(the Mohmand tribal area)の稜線上に配置された2ヶ所の前哨、ボルケーノ(Volcano)とボールダー(Boulder)の位置を記したNATO軍地図を与えたという主張を繰り返しました。彼はタリバンがそうした構築物を使わないとも言いました。「タリバンは前哨を造りません」「武装勢力は前哨を造りません。それが武装勢力に対して進行中の戦争です」。

 アッバス少将はNATO軍とアフガン軍が、パキスタン軍に彼らの軍が夜間作戦を国境地域で行うことを通知しなかったことを含めて、標準作戦手順に大きく違反したと批判しました。

 アッバス少将は米軍とNATO軍を同士撃ちを防ぐことを狙って確立された交戦規定を無視したと批判しました。このルールは、攻撃がパキスタン軍の全省から来ているかどうかを判断するために、攻撃を受けている部隊にパキスタン軍に連絡することを要求します。パキスタン軍はNATO軍にボルケーノ前哨が攻撃を受けていると連絡しましたが、彼らは攻撃を続け、ボルケーノ前哨の兵士を助けるための増援と共にボールダー前哨を攻撃したとアッバス准将は言いました。

 クラーク准将は誰が彼らに発砲していたか、この地域に友軍のパキスタン軍がいたかは特定できなかったと認めました。米軍は不正確な地図を使い、誤ってパキスタン軍に戦いが起きている場所を間違って約14km離れていると答えました。


 昨日の記事の訳に間違いがあることに気がつきました。戦闘の位置を間違って知らせたのは米軍の方でした。昨日の記事も会わせて修正してあります。

 それにしても、見解の食い違いが大きすぎます。地図の食い違いは、この記事にNATO軍の地図にパキスタン軍が前哨の位置を書き入れたと書いてあります。しかし、米軍は前哨の位置を知らなかったと言います。

 米軍とアフガン軍を攻撃したのが武装勢力なら、パキスタン軍が攻撃をしていないという説明は正しいことになります。しかし、攻撃の拠点を攻撃してパキスタン軍に命中したのなら、パキスタン軍が攻撃していたと考えられ、間近で武装勢力が発砲しているのにパキスタン軍が気がつかないこともありません。この点はどちらかが嘘をついているのだと考えられます。

 報告書そのものも読まないと、確定的な評価はできないようです。クラーク准将の記者会見の要約が見つかりました(記事はこちら)。

 第三者の立場からは、両者で合同の調査委員会を作り、真相を究明するしか手はないと言いたくなりますが、その徴候はありません。



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