性器、泌尿器を負傷した兵士に補償金
military.comによれば、退役軍人援護局(the Department of Veterans Affairs)はイラクとアフガニスタンの戦いで増加した、IEDによって性器に障害を負った兵士に最高100,000ドルの一括払いを認めると発表しました。
男性、女性どちらも支払いを受ける権利があります。
今年初期に陸軍医療司令部は性器の負傷に関するデータを発表しましたが、戦傷については論じませんでした。陸軍広報は性器への負傷について話すと、敵にIEDやその他の武器の有効性について見識を与えかねないと言いました。
連邦官報(The Federal Register)は、2009~2010年にドイツのラントシュトゥール地域医療センター(Landstuhl Medical Center)に運ばれた負傷者の割合が、これらの怪我の割合が4.8%から9.1%へ増加したと言いました。
国防総省は2001年10月7日~2011年5月2日までに、約570人の隊員が性器に負傷したことを見出しました。発表は陸軍の外科研究機関が、2001年10月~2008年1月までに、海外の戦争でトラウマと認められ統合戦域外傷登録(the Joint Theater Trauma Registry)の5%の隊員が性器に一カ所以上の怪我を負っていることを見出しました。
身体的、永続的にペニスを喪失した場合、一括払いで50,000ドル、睾丸1個の損失は25,000ドル、2個損失は50,000ドルが支払われます。身体的、永続的に外陰部、子宮、膣管を喪失した場合は50,000ドル。卵巣はそれぞれが25,000ドル。泌尿器システム機能の永続的喪失は50,000ドルです。
性器喪失への支払いは今日始まり、アメリカがアフガンに侵攻した2001年10月7日まで遡及して適用されます。
要点のみを紹介しました。
このニュースを読んで、どう感じるでしょうか。
私はかねてからの疑問が解け、また愚かしさについても考えさせられました。
IED攻撃が増えてから、兵士がどのような怪我を負っているのかを想像する時、股間に著しい怪我が予想されるのは当然でした。しかし、それに対する情報はほとんどありませんでした。主に言われたのは頭部への衝撃による外傷性脳障害です。それも大きな問題ですが、股間の負傷については語られてきませんでした。腰に着けた防弾具だけで問題が解決できてしまうとも思えませんでした。それが、この記事で杞憂ではなかったことが分かったわけです。
この問題が、アメリカがアルカイダと戦い初めて8年経ってから分かったわけはありません。少なくとも2004年までには分かっていたはずです。2001年10月にアフガンに特殊部隊を送ったのは、太平洋戦争時の「ドーリットル空襲」と同じです。真珠湾を攻撃されたアメリカは出来るだけ早くに東京を攻撃して見せる必要がありました。そのために、作戦上は無理があったものの、真珠湾攻撃後約4ヶ月でジミー・ドーリットル中佐に東京空襲を強行させました。一回きりの空爆で、軍事的な成果はほとんどなかったものの、とにかくも日本に一太刀浴びせたという印象を国内外に広める意味を、この攻撃は成し遂げました。アメリカは陸軍レンジャー部隊を送り、カンダハル空港を攻撃して見せました。とりあえず、反撃しているという態度を示すためでした。
やがて、CIAエージェントは北部同盟と接触して、タリバンに対する反攻を開始しました。でも、この頃には、タリバンと戦ったのは主に北部同盟であり、米軍ではありませんでした。だから、IEDによる死傷者もほとんどいませんでした。
2003年3月に「イラクの自由作戦」を行った時もIED攻撃はほとんど起きていません。アメリカがバグダッドを占領した後も、武装勢力は小火器で米軍を攻撃しようとしましたが、航空支援のお陰でうまく行かないことが多くなりました。そこで考案されたのがIEDによる待ち伏せ攻撃です。これが効果的だと分かると、IED攻撃は武装勢力の戦術の要となり、2004年には爆弾事件が文字通り爆発的に増加したのです。
つまり、2004年までには、性器と泌尿器への負傷は傾向として顕著に見られたはずなのです。だから、8年後になって新しく判明したわけはありません。これは、これまで隠されていた公然の秘密、不都合な真実だったのです。「性器への負傷について話すと、敵にIEDやその他の武器の有効性について見識を与えかねない」という陸軍公報の見解は笑止千万であり、自分たちの格好悪さを隠そうとしているに過ぎません。IEDに小さな鉄球や釘を入れて、効果を増すような工夫は、過去から伝統的に行われていたことであり、止めようがないことです。
これまで対処がなされなかった理由は軍人たちの見栄です。テロリストと戦う軍人が「股間」に負傷して続々と帰国しているなんて、格好悪くて口にできないのです。特に、2003年以降、アルカイダへの報復で燃えさかるアメリカの世論の中で、このようなことは口にできる雰囲気はありませんでした。オバマ政権になって、イラク侵攻に反対して陸軍を去ったエリック・シンセキ大将が復員軍人援護局の長官に指名されて、ようやく言える環境が整ったというわけです(シンセキ大将については、過去の記事を参照してください)。
いかに軍人が体面を気にするか。世間がその立派な姿に酔いしれ、戦争の真実を見過ごすかについて、この記事は書かれている事実以上のものを伝えていると、私は考えます。
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