NATO軍がロシア軍の能力は限定的と評価

2011.2.16


 military.comによれば、WikiLeaksが公表したアメリカ外交電報が、2009年のロシア軍の2大規模な機動演習の後で、時代遅れの装備、輸送力の不足、人的資源不足により、NATO軍がロシア軍の能力を低く評価したことを明らかにしました。

 記事から、ロシア軍の問題点を抽出します。

 ロシア軍は国内西部地域で小規模な紛争に対応することしかできません。機動演習は彼らが同時に起こる2つの小規模な紛争を戦えないこと、より大きな軍事行動を始められないことを示しました。

 NATO軍の報告書は、2009年にロシアの西部におけるラドガ(Ladoga)、ザパド(Zapad)という暗号名をつけられた2つの大規模な機動演習のあとで出されました。それらはグルジアでの2008年の輝かしい勝利のあとのロシア軍をテストすることを意図していました。

 演習は、ロシアが空軍との共同作戦の能力を欠き、老朽化した旧式の装備に依存し、全天候能力と戦略的輸送手段が不足し、将校団は柔軟性を欠き、人的資源が不足しています。

 報告書は、ロシア軍が未だに小規模な紛争ですら、短距離の戦場用核兵器を使う準備をしているらしいとも主張しました。ロシアは1,000発以上の戦術核弾頭を保有していると考えられています。これらは国際法で禁じられていません。

 NATO軍はWikiLeaksが外交電報を公開したことを非難しました。通常、NATO軍は情報の正確さについてコメントしません。


 記事には他にも色々書かれていますが、問題点以外はほとんど省略しました。

 WikiLeaksが公開した外交電報は、できれば読んでみたいと思いますが、とりあえず記事を読んだだけで論評します。

 指摘された内容は予想できる範囲であり、むしろそれ以下です。記事はグルジア共和国へのロシア軍の武力介入が素早かったことから、西側軍事筋の注目を惹きつけたとしています。しかし、演習ではそれほどのパフォーマンスは観察されなかったのです。

 あげられた問題点は過去にも言われたことがあることが中心ですが、戦略的輸送手段については初耳でした。ロシアにはAn-124など世界最大の輸送機があるはずです。航空機を民間と共有していて、国土が広いことから実質的には不足しているのかも知れません。

 しかし、こうしたロシア軍の弱点を聞いて安心しているだけでは戦略家とは言えません。劣勢の側は、こうした弱点をどうカバーして戦うかを考えるものだからです。もし、弱点をさらさずに戦えるのなら、ロシア軍はそこに全力を投じるでしょう。戦争はギャンブルです。勝負強い方が勝つのです。



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