ザウィヤがカダフィ軍の手中に
リビア情勢について、いくつかの記事から注目点を抜粋しました。国内報道で知られていることは、できるだけ省きました。フランスが反政府側をリビア政府として承認したことなどは省略します。
military.comによれば、カダフィ大佐はザウィヤ(Zawiya)を奪還したと主張しました。トリポリにいる西欧の記者たちは、水曜日にザウィヤ郊外の、緑の旗を振るカダフィ派で埋まり、花火を備えたスタジアムに連れて行かれました。食糧、飲み物、料理用油が配布されると、リビアのテレビ局は祝賀会を撮影しました。政府の護衛は、街中心部の広場を訪問するという記者たちの要請を拒否しました。
6日間の包囲の間、電話線は通じていませんでした。赤十字社の理事、ジェイコブ・ケレンベルガー(Jakob Kellenberger)は、地元の医師は過去数日間に東部で反政府側が支配するアダビ(Ajdabiya)と政府が支配するミスラタ(Misrata)の病院に運ばれる犠牲者が急増したと言いました。どちらも激しい戦闘と空襲がありました。ケレンベルガーはミスラタで重傷者40人が治療を受け、22人が死亡したと言いました。彼は、アダビヤで赤十字社の外科チームが先週55人を治療し、「民間人が暴力の矢面に立っています」と言いました。彼は支援組織はトリポリを含む西側地域ではアクセスから切り離されていますが、東部の反政府派が支配する地域よりも戦闘により、もっと激しく影響を受けていると考えています。
ブラジルの新聞「O Estado de S. Paulo」は木曜日に、リビア動乱に派遣した特派員アンドレ・ネット(Andrei Netto)と1週間前から直接連絡が切れたと報じ、別の氏名不明の記者と、リビア人ガイドと共に捕虜になったのを恐れていると書きました。日曜日までに、同紙はネットはザウィヤ地区で無事だという間接的な情報を受け取りました。しかし、水曜日には同紙は、その情報はネットがリビア政府軍の捕虜になったことを示唆しており、リビア当局者は情報が恐らく正しいと言ったと書きました。ネットは2月19日にチュニジアからリビアに入国し、ザウィヤに向かいました。イギリス放送協会の職員は、同協会の3人が政府軍に拘留され、殴打され、偽の処刑をされたと言いました。BBCのアラビア・チームはザウィヤから南に6マイル(10km)の検問所でカダフィ軍に捕まりました。
military.comによれば、NATO軍はリビア上空に飛行禁止区域を設けるには、国連の承認が必要だと考えています。グリニッジ標準時の木曜6:30に最初の警戒機がパトロールを始め、ボーイングE-3早期警戒管制機が8時間交替で地中海上で活動しています。NATO軍はE-3を17機持っています。数機はアフガニスタン上空で活動しています。すべての機体はルクセンブルグに登録されています。NATO軍は月曜日に監視を決定し、火曜日に命令が出されました。
BBCの記事から、各都市の支配状況を見てみます。
ラス・ラナフ(Ras Lanuf)の反政府派は、カダフィ軍の継続的な攻撃の後で退却しました。ある記事は、カダフィ軍の戦車が紛争が始まってから最も東まで移動したと書きました。ラス・ラナフの目撃者は、街の居住区で多くの死体を見たと言いました。街の病院は爆撃を受けて非難し、石油施設の労働者が住む居住区のモスクが攻撃されました。「カダフィは飛行機、戦車、ロケット、重火器で我々を攻撃します。我々は非武装の民間人で、多くの家族と子供が攻撃されました」とあるリビア人がBBCに言いました。ある反政府戦士は、「我々は負けました」「砲撃を受け、我々は逃げています。つまり、彼らがラス・ラナフを手にしています」と言いました。しかし、ロイター通信は街が陥落したことを否定するように反政府派の言を引用しました。
政府の航空機はさらに東の石油出荷港、ブレガ(Brega)を目標にしました。ある目撃者は、反乱軍はカダフィの地上軍に対抗できますが、空爆にはより脆弱だと言いました。空爆は石油施設も目標にしていたと、彼は言いました。
ザウィヤの戦いは現在、ほとんどまたは完全に政府側の支配に落ちたと報じられています。ロンドン・タイムズ(the Times of London)はザウィヤから、木曜日に市の中心部が政府側の支配下にあると報じました。そして、激しい戦闘のあとで掃討作戦が進行中です。BBC特派員、ジョナサン・マーカス(Jonathan Marcus)は、軍事バランスがカダフィ大佐派に変わったかも知れないという恐れは、緊急の国際的行動の要請を促していると言います。
NATO軍のアンダース・フォー・ラスムッセン事務総長(Secretary General Anders Fogh Rasmussen)は、リビアに対する武器輸出禁止を実施するために、地中海で海軍を増強することに同意したと言いました。
リビア軍が奪取したと主張するザウィヤのスタジアムと思われる場所は、Google Earthで見ることができます(kmzファイルはこちら)。ザウィヤ北東部の海岸近く、住宅地のさらに外側にあるスタジアムがそれでしょう。ザウィヤ中心から約3kmの場所です。
中心部からは離れているとは言え、これくらいの距離で祝賀会を行えるのは、ザウィヤが陥落したか、それに近い状態だということを示します。だから、早くに空爆を実施すべきだったのです。無用の策を弄すれば、必要なことに戦力を使えないのが戦略の常識です。2003年以来、欧米は間違った戦略による戦争を続けてきたため、新しい脅威に対して、即座に態勢を変えることができないのです。情けないのですが、これが世界の現状であり、限界です。
ラス・ラナフについて、ロイター通信の曖昧な報道はよく理解ができません。陥落したのかどうかを明確にしなければなりません。
今日の報道は、リビア情勢が一つの転回点に来たのかも知れないことを意味します。このまま欧米が消極的な行動を続ければ、カダフィ政権が力任せに反政府派を寄り切る可能性があります。しかし、数日中に飛行禁止区域を設定すれば、カダフィ軍の空爆を止めることができます。そうすれば、反政府側に必要な物資を渡して、反撃を促せるのです。そうしないと、リビアの動乱は余計に被害者を出すことになります。
戦争は避けるべきですが、こうした緊急的な状況においては、必要な軍事行動を素早く行い、できるだけ犠牲者を減らすことも重要です。こういう時のために、国の戦力は全力での活動を避け、常に余裕を持たせておくべきなのです。アメリカもヨーロッパも、ほとんど成功の見込みのないイラク・アフガン侵攻にうつつを抜かして、こうした中東と北アフリカの歴史的な変革期についていけないわけです。だらしないと言うか、情けないと言うか、問題意識を持つ者は世界に誰もいないのでしょうか?。
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