米専門家は海水注入を自暴自棄と指摘

2011.3.13


 nuclearpowerdaily.comは、アメリカの核専門家たちは、地震に襲われた原子炉を冷やすために海水をくみ上げることは、チェルノブイリ型の災害になり得る「自暴自棄の行為」だと警告したと報じました。

 数人の専門家は記者との電話取材で、福島第1原発の結果に関係なく、事故は原子力発電ルネッサンスに深刻なダメージを与えると予測しました。

 政策研究所(the Institute for Policy Studies)で核軍縮に取り組むロバート・アルバレス(Robert Alvarez)は「状況は十分に絶望的になりました。彼らは原子炉に真水や淡水を供給して、安定させる能力がないらしく、いまは自暴自棄の行為で、海水を転用する方向に向かわなければなりません」と言いました。「私はこの処置を『ヘイルメアリー・パス(Hail Mary' pass)』と呼んでいます」。これはアメリカンフットボールで時間切れのゲームで最後に勝つための努力を指すスラングです。

 原子炉事故のシミュレーションに取り組んだ物理学者、ケン・バージェロン(Ken Bergeron)は「これは極めてなさそうなことでしたが、発電所の停電は何十年も強い懸念の一つでした」と言いました。「我々は未知の領域にいます」。原子炉は停止されましたが、懸念は炉内の熱で、それは冷却されなければ溶けます。もし、炉心が格納容器を通り抜けて溶けたら、原子炉格納建造物の床面に流れ得ます。もしこれが起これば構造物が崩壊する、と彼は言いました。「この発電所の原子炉格納建造物は確かにチェルノブイリのよりも堅固ですが、スリーマイル島のよりはかなり弱いので、時間が経てば分かるでしょう」。

 米国原子力規制委員会(the US Nuclear Regulatory Commission)のピーター・ブラッドフォード(Peter Bradford)は、冷却の努力が失敗すれば「それは砂とセメントを落とし始めるチェルノブイリ型の状況です」と言いました。

 プログシェアズ財団(the Ploughshares Fund)の理事、ジョセフ・サーインシオン(Joseph Cirincione)は、「これが続くなら、彼らがこれを制御できないのなら、我々は原子炉の部分的な炉心溶融から完全な炉心溶融へ行きます。これは完全な災害です」とCNNに言いました。サーインシオンは、施設が爆発した後の大気中の放射性セシウムが部分的な炉心溶融が進行中であることを示唆すると言いました。「それは燃料棒を露出していること、水位が燃料棒よりも下がり、燃料棒が燃えだし、セシウムを放出していることを示します」と彼は言いました。

 日本政府は原子力非常事態を宣言し、原発が土曜日に爆発した後で、発電所から12マイル(20km)以内に住む大勢の人たちは避難するよう言いました。

 ビヨンド・ニュークリア(the US organization Beyond Nuclear)のポール・ガンター(Paul Gunter)は、避難地域が小さすぎるかも知れないとFox Newsに言いました。「原子炉格納建造物が失われたら、それは途方もない量の放射能を拡散し、それは気候によって運ばれます」。

 NRCは沸騰水型原子炉の専門家2人を日本に派遣しました。元NRCのブラッドフォード(Bradford)は「これは明らかに、いわゆる原発ルネッサンスの重要な障害です」「テレビ画面の中で、あなたの目の前で、原発が爆発する映像は初めてです」。しかし、世界原子力協会(World Nuclear Association)の広報官、イアン・ホア・レイシー(Ian Hore-Lacy)はCBSに完全な炉心溶融の脅威は最小限だと言いました。「その可能性は最良の状態ではありそうになく、燃料が冷却を得て、熱が減少していることで、時間と共に減少しています」と言いました。


 ほとんどの専門家はかなり危険な状態だと言っていますが、日本政府はそのような表現は一度たりとも用いていません。

 炉心の温度は現在どの程度なのか。現地でどの程度の放射能が観測されているのか。非常に重要な情報がほとんど出てきていません。

 それから、言葉の定義について再確認しておきます。炉心溶融(メルトダウン)という言葉を日本政府や一部のマスコミは原子炉の建物全体が破壊され、大量の放射線が放出されるような状況を指し、燃料棒の一部が溶けるような状況はそう呼んでいないようです。マスコミの中にも用語の定義は数種類あるように思われるので、十分に注意してください。英語で書かれた情報の場合、程度の差こそあれ、燃料棒の一部なりとも溶けるような状況は全部「meltdown」と書かれています。

 そういう意味では、言葉の定義が違うだけで、発生している現象については誰もが似たようなことを言っているのかも知れません。しかし、政府は国民を信じて、観測された情報を提供し続けるべきです。



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