完全な炉心溶融を想定すべき

2011.3.15
追加 同日 9:25

 これまでの経緯からすると、福島第1原発で完全な炉心溶融が起きることを想定すべき段階に来ています。

 読売新聞の記事によると、14日午後6時22分に燃料棒がすべて露出し、その後水位が一端回復したものの午後11時頃に再び燃料棒が完全に露出しました。この記事を書いている早朝の段階で、水位は回復していません。長時間、燃料棒が露出していることから、原子炉内部が極めて高温、高圧になっていることが考えられ、これはさらに危機的状況を悪化させます。

 最初から書いていますが、情報が遅く、少なすぎるのが問題です。問題がかなり進まないと発表されない点、それが合法的なものだとしても危機的な状況においては不十分です。私が現地に住んでいるのなら、政府発表はあてにならないと判断して、早い段階でできるだけ遠くに自主避難します。情報開示ではなく、対応そのものも遅すぎます。昨日になって、日本政府が国際原子力機関(IAEA)に専門家チームの派遣を求めたと報じられました。彼らが到着する前に、最悪の事態が起きてしまうかも知れません。

 たとえば、東京電力のホームページでは、原子炉の圧力をリアルタイムで表示していたのですが、現在は1、2、3号機について次のような表示が出ています。(該当ページはこちら

申し訳ございません。○号機はデータ表示不良のため「-」となっております。

 ○には1〜3の数字が入ります。

 モニタリングポストの放射線計測値は時折ホームページ上に掲載されています。(該当ページはこちら・現時点で最新のpdfファイルはこちら)。原子炉の状況に関するプレスリリースも読むことができます(該当ページはこちら)。 報道はこれらの資料を元に行われていますが、実際のデータを見ることも重要です。

 東京電力のホームページから、ニュースを読み解くための基本的な数値を転載しておきます。

水位の振れ幅を考慮した下限値・上限値
1号機   430〜1120mm
2・3号機  1002〜1309mm

原子炉圧力
・1号機   6.91MPa 以下
・2〜3号機 7.03MPa 以下

 政府は「冷静な対応」を呼び掛けていますが、これは被災者をミスリードする危険があります。

 リビア情勢も急変し、カダフィ政権が反政府派を押さえつつあります。しかし、とてもすべてを語ることは不可能です。今日はこの後、更新ができない可能性の方が高いので、当サイトすらあてにせず、現地の人々は被害を避けるための行動を取るようにお願いします。

 続報を目にして、さらに追加します。本日午前6時14分頃に、圧力抑制室付近で爆発音がして、ここの圧力が下がったという発表がありました。東京電力の記者会見を見ると、1気圧まで下がったということで、過去に事例がなく、原因は不明ということです。すでに最悪の事態、完全な炉心溶融は極めて近くまで来ていると考えるべきです。幸い、日本の原発は比較的堅固のようですが、チェルノブイリ原発事故ほどではなくても、かなりの放射線が拡散する危険を考えなければなりません。



Copyright 2006 Akishige Tanaka all rights reserved.