負傷者から見る原発の問題点

2011.3.16

 危機的な状況は依然として続き、さらに悪化しています。すでに福島第1原発は制御できているとは思えません。炉心完全な溶融が起こっていないのは、単に運がよいだけでしょう。これを書いている間にも何があってもおかしくはありません。

 ハードウェアに関する情報がまだまとめられていないので、周辺の情報から事故を考えます。

 本日午前0時30分現在の東京電気のプレスリリースによると、同原発では、すでに20人以上の社員が負傷か行方不明になっているようです。

  • 地震発生当初、発電所構内において協力企業作業員2名に負傷が発生し、病院に搬送 ・当社社員1名が左胸を押さえて立てない状態であったため、救急車にて病院に搬送
  • 免震重要棟近傍にいた協力企業作業員1名の意識がないため、救急車で病院へ搬送
  • 原子炉建屋内で作業していた当社社員1名の線量が100mSv を超過し、病院へ搬送
  • 当社社員2名が1、2号機中央制御室での全面マスク着用作業中に不調を訴え、福島第二原子力発電所の産業医が受診することになり、福島第二原子力発電所へ搬送
  • 1号機付近で大きな音があり白煙が発生した際に4名が負傷し、病院へ搬送
  • 3号機付近で大きな音があり白煙が発生した際に 11 名が負傷し、福島第二原子力発電所等へ搬送。
  • 当社社員2名が現場において、所在不明

 このため、地方の電気会社に志願者を募り、同原発へ派遣する準備が進められています。

 上で気になるのは、現場の社員・協力社員が急性の放射線障害で倒れていることです。しかも、制御室にいる全面マスク着用中の社員が倒れています。外部被曝だけで、それだけの放射線量を受けているのです。

 福島第1原発の「中央制御室」は、東京電気の記者会見室のホワイトボードに書かれた図によると、3号機と4号機の間にあるというように、原子炉の中間地点にあるようです。また、東京電気社員の説明では、制御室は建屋内にあるように受け取れました。これはかなりの衝撃です。私は制御室は放射線を防ぐ能力を持つ地下に造られていると考えていました。また、もっと離れた場所に、同じ施設を予備として設けているのだと考えていましたが、実際には原子炉のすぐ近くにあったようです。これでは、事故が起きた際に放射線レベルが高まり、社員がそこにいられなくなるのは明白です。この原発は最初から危機を想定していないのです。

 昨年12月9日のプレスリリースによれば、中央制御室と1号機タービン建屋の間にあるケーブル貫通部にシール不良箇所があり、空気が流れ込んでいるのが発見され、シール部材の充填などで対処したということです。このように、ごく小さな部分に隙間があれば、今回のような事故でさらに広がる可能性もあります。こんな風に完璧に見えたシステムは崩壊していくわけです。非常用発電機の燃料タンクが津波で流されたということも、それが地下タンクであると思い込んでいた私には理解できないことでした。

 東京電気の報告には疑問もあります。

 4号機の建屋に穴を開けて水素を逃がすと言っていましたが、放射線レベルが高い建屋で、どうやって穴を開けるのかが疑問でした。やがて、ヘリコプターで使用済み燃料プールに注水して、不足している冷却水を補給するという話が出てきました。屋根上の使用済み燃料プールの上に穴が開いているのなら可能かも知れませんが、そうなのでしょうか?。記者会見では、水ではなくホウ酸を投下するという話も聞きましたが、粉末をうまく空中から散布して、穴を通して使用済み燃料プールに入れられるのでしょうか?。私には東京電気はできないことをやろうとしているように思えます。



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