原子炉への電気供給に成功
福島第1原発の壊れた原子炉への電気が回復する目処がつきつつあり、危機は峠を越したと考えることができます。そして、6号機からは貴重なデータが出てきました。
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6号機の観測値 |
設計上の基準値 |
東西方向 |
431ガル |
448ガル |
南北方向 |
290ガル |
445ガル |
上下方向 |
244ガル |
415ガル |
東西方向の揺れは基準値に近いものの、その他はそれほどでもありません。これなら、格納容器の損傷はそれほど心配しないでよいかも知れないと考えることができます。長時間の放水も可能になりました。まだ、安心できないものの、最悪の事態は避けられるのかも知れません。それでも、まだ分からない部分も多く、完全に問題が克服されたかは不透明です。施設を徐々に改善し、冷却を何年間も続けられるようにできるかは、目の前の危機回避とは別の話でしょう。
不透明な部分というのは、4号機の使用済み燃料プールに亀裂が入っているという件です。これはロスアンゼルスタイムズが報じたものです。懸念を指摘したのはグレゴリー・ヤズコ米原子力規制委員長(Gregory Jaczko)です。彼は4号機の使用済み燃料プールが沸騰して水分がなくなり、大量の放射線を大気に放出していると考えています。「我々は原子炉周辺に高い放射線のレベルがあると考えています」「緊急作業員が原子炉に近づくのは非常に難しいでしょう。彼らが受けるかもしれない放射線量は潜在的に短期間で致死の放射線量でしょう」。これについて、記事には理由が特に書いてありません。産経新聞は、地震が起きた後の事態の推移、事故発生時に同原発にいた米国人から得た情報が根拠だと書いています。日本の作業員が地震時に金属製配管の継ぎ目から、水が勢いよく流れ出ていたと証言していますから、何かは不明ですがパイプ類が破損したことがあったようです。プールそのものが壊れるところや、こうした事象をアメリカ人が目撃した可能性はあります。同紙の別の記事によれば、 50マイルという避難半径距離はヤズコ氏のアドバイスによるものです。しかし、原子炉に肉薄しての放水ができたことを考えると、この意見には疑問もあります。ヘリコプターから使用済み燃料プールに水があることが確認されたことは、彼らも承知しています。それでも、このように主張することには理由がある可能性もあります。私は原子炉の破損が酷いのに、観測される放射線が低い点が引っかかっています。
米原子力規制委員会は、3月11日の地震と津波に関する問答集(pdfファイルはこちら)、3月16日のヤズコ氏の米原子力規制委員会での証言(pdfファイルはこちら)を公表しています。これらはまだ読んでいませんが、気になるところがあれば紹介します。
昨日の記事に、一部事実誤認があったので修正しました。共有使用済み燃料プールと各原子炉の使用済み燃料プールを混同していました。
なお、明日の更新は夕方以降の予定です。
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