東京電力に危機管理能力はない

2011.3.29


 東京電力の現場の対応を見ると、大規模な原発災害に対して、対策を持っていなかったことが分かります。

 同社の清水正孝社長が不眠不休で動いたために17日に倒れ、1週間職務から離れたのは、彼が非常時の行動方針を持っていなかったことを表します。これが津波でなく戦争で、複数回の空爆によってより原発が破壊され、格納容器と圧力容器が破損し、放射線が大量に放出された場合なら、完全にお手上げです。

 これは、原発が防衛の大きなった弱点であることが暴露されたという、防衛上の問題でもあります。

 1号機から北西約300mにある「免震重要棟」に緊急対策室があり、ここの状況が報じられるようになりましたが、とても十分と思えません。ここには1ヶ月程度は自給できる資源を備蓄し、建物には放射線防護や人体の除染機能を持たせるべきです。500人程度が活動し、休息するのに十分な場所と寝棚や簡易ベッドを設けておくべきです。原子炉からの距離も300mでは近すぎ、放射線レベルが高い場合に不都合のように思われます。

 毛布が1人1枚とか、雑魚寝や椅子を並べて寝るといった状況では作業員の疲れが溜まるだけです。食事も、朝がビスケットと野菜ジュース、夜が非常食用の五目ご飯などと缶詰では十分とは思えません。私は疲労回復用にクエン酸を常用します。これには血圧を安定させ、ストレスを緩和する効果もあります。こうした栄養剤なども利用して欲しいものです。なにより、疲労から来るヒューマンエラーが心配です。すでに放射線レベルを間違って報告するなど、それを連想させる問題が起きています。

 かつて、機動隊がテロ対策として原発の警備を始めたとき、テロの脅威があるというよりは、仕事が減った機動隊のための任務かと思いました。必要以上に秘密めかした原発でしたが、ふたを開ければ大した対策を持たない危険な施設であることが分かりました。

 最近、北海道の泊原発には津波に対する対策はないことが分かりました。ここは9.8mの津波を想定して建設されたため、これまで対策は必要ないと考えられてきたのです。しかし、15mを越える津波が現実になったいま、対策を立てる必要があり、その方針を発表しました。

 中部電力は静岡県の浜岡原発で、発電所内の高台に非常用ディーゼル発電機を設置し、原子炉冷却装置部品の予備を確保し、その倉庫も高台に新設すると発表しました。予備があっても2台の発電機が隣接しているのでは、同時に壊れる可能性があることを電力会社がやっと認めたのです。

 福島第1原発は非常用発電機の燃料タンクが一つしかなく、それが津波で壊れたので冷却装置が使えなくなりました。少し考えたら、タンクは複数が必要で、高台の上に設けるべきだと分かるはずですが、原子力技術者たちは「適切」に対処するのが身上らしく、必要以上のことをしないようです。これは危機管理においては失敗につながる大問題です。 事柄に応じて、必要以上のものを用意する方が安全な場合もあることを、彼らは知るべきです。

 ところで、菅直人総理がヘリコプターで福島第1原発を視察したことが、原子炉の圧力を下げるために水蒸気を排出するのを遅らせたと週刊誌などて報じられ、今日の参院予算委員会で自民党の礒崎陽輔議員が厳しく追求しました。しかし、自民党がこれを追求しても、腰砕けに終わります。なぜなら、中越沖地震では自民党の安倍晋三総理が地震当日に火災を出した柏崎刈羽原発を視察しているからです。

 東京電力の一時的国有化が政府内で検討されているという報道があります。これまでの経緯を見ると、国有化して、すべてをトップダウンでやるしかないのかとも思えます。

 そして、いま思うのは、テポドン2号の騒ぎは、やはり偽の脅威だったということです。今と当時では、脅威の度合いがまったく違うことは、いまこそ誰もが実感できるはずです。



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