アフリカ連合がリビア調停に乗り出すも

2011.4.12


 military.comによれば、リビアのカダフィ大佐が停戦に応じる態度を見せました。すでに停戦を宣言して、自分で破棄したこともあるカダフィ大佐ですが、今度はアフリカ連合が調停に出てきた点が違います。長い記事なので、簡単にまとめます。

 アフリカ連合のロードマップは、即時停戦、人道的支援のチャンネルを開くことでの協力、反政府派と政府が対話を始めることを求めています。しかし、アフリカ連合は、反政府派が求めている、カダフィ軍の市街からの撤退に触れていません。

 南アフリカのジェイコブ・ズマ大統領(President Jacob Zuma)は、マリとモーリトニアのトップと共にカダフィ大佐と話すためにトリポリに来ました。明日は反政府派と話します。ズマ大統領は、和平にチャンスを与えるために、NATO軍に空爆中止を求めました。

 アフリカ連合の平和安全保障評議会の長、アルジェリアのラムテーン・ラマムラ(Ramtane Lamamra)は、日曜日のカダフィ大佐との会談で、権力の放棄が話題になったと言いましたが、詳細は明かしませんでした。

 反政府派がアフリカ連合を公正な調停者として受け入れるかは不明です。

 反政府派が規律と組織を改善しても、彼らはカダフィ軍よりも遥かに劣勢です。国際社会は、空爆があっても、反政府派がカダフィを打倒できないと疑っており、外交努力をする一方で、戦士の武装強化のような選択肢を検討しています。

 このあとは戦況に関する情報が書かれています。興味深い記述もありますが、結論だけ書きます。政府軍はアダビヤまで前進したものの、陥落はしていません。それから、反政府派はカダフィ軍の多くが傭兵(民間軍事会社の戦闘員)だと言っている点も気になります。


 記事を更新する前に、反政府派がアフリカ連合の調停案を蹴ったという記事が出てしまいました。これは、この記事からも予測できたことでした。

 カダフィ大佐がこの調停に乗るのも形の上だけのことだと考えられます。国際刑事裁判所が彼の虐殺行為に関心を示しています。国際的な調停は、こうした国際司法上の動きも無視できず、最終的には、彼の身柄の引き渡しは不可避となるでしょう。裁判にかけられるのを承知で、カダフィ大佐が和平を望むはずはありません。彼は自分が殺されるのを黙って認めるような人物ではなく、国家のために自分を犠牲にすることはないでしょう。彼は、敵に家臣の安全を保証させ、自らは切腹するようなサムライではありません。自国の国民を「人間の盾」にして恥じない人物です。アフリカ連合の提案を呑んだのは、交渉を続ける形にしておけば、少しは時間稼ぎができると考えるからです。

 その上、カダフィ大佐の権力放棄について調停役は公言できませんでした。これはカダフィが同意しなかったことを示します。もし、反政府派との交渉の前にそれを発表すれば反政府派は会談自体を無価値だとみなしたでしょう。アフリカ連合としては、反政府派と会談した上で、カダフィ側の意向を伝え、仲介を形ばかりでも前進させたかったのです。

 このように戦闘の最中の外交交渉は成功しがたい理由があるのです。その内容をよく見て、間違いがないものかどうかを判断しない限り、紛争終結を急ぐべきではありません。交渉自体が紛争に利用される危険があるからです。

 ズマ大統領が調停を率いている点も失笑ものです。彼は2005年にレイプ事件で訴えられたことがあります。無罪になったものの、「HIV感染者の女性との性交渉の後で、すぐにシャワーを浴びたから感染はしない」と豪語した、意味不明の人物です。

 それでも、アフリカ諸国が国際的な枠組みの中で行動しようという意志が見られることは幸いです。日本も、こういう活動の後押しができるくらいの余裕が欲しいものです。日本は国際活動に際して、常に「国益のため」を錦の御旗にしますが、これは正しい態度とは言えません。



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