福島原子力事故がレベル7へ

2011.4.13


 military.comが、日本政府が福島第1原発の危険レベルを最大の7にした件を報じました。記事の多くは国内でも報道されていることです。その中で気になる部分を選んでみました。

 IAEAによれば、新しいランキングは、環境と健康に対する広範囲にわたる影響「重大事故」を意味します。しかし、日本の当局者は、いかなる影響やストレスも、チェルノブイリ原発が生じた損害が福島原発が生じたことよりも上回るとして、未だに低く見積もります。

 京都大学原子炉実験所の宇根崎博信は、再評価は懸念することではなく、放射線の全般的な放出によるもので、健康被害に直接つながるものではないと言いました。彼は、ほとんどの放射線は危機の初期に放出され、原子炉はいまもほとんどが無傷の格納容器を原子炉炉心の回りに持っています。変更は「環境や健康への直接の影響はありません」と宇根崎は言いました。「すべての観測データから判断して、それはまったく制御されています。それはかなりの量の放出がいまも続いていることを意味しません」。

 原子力安全・保安院の西山秀彦は「我々は信頼できるデータが得られるまで、発表を控えました」と言いました。

 国連の保健機関は、9,300人が放射線が原因の癌で死亡するかも知れないと言いました。グリーンピースのような一部のグループは数字を10倍以上としました。


 私はレベル7への再評価は遅すぎたと感じます。この事故は最初からチェルノブイリの事故レベルと近かったと考えます。各原子炉の被害状況はチェルノブイリの事故ほどではありませんが、4基の原子炉が同時に不安定になり、それぞれに対処しなければならない状況は、複合的で、単一の原子炉の事故よりは複雑です。だから、こうした簡単な指標で表現するだけでは評価しきれないとも考えます。

 今回起きている原発事故の大半は、事前に指摘されていたことです。原子力安全・保安員の西山氏は事故について「不可抗力」と言ったそうですが、設計の段階で津波対策をしていれば、重大事故は避けられたことは女川原発の被害が小さかったことからも明らかです。これまでの原子力政策が初期の段階で道を間違えたのであり、不可抗力ではないのです。

 国連機関や環境団体が癌の多発を懸念していますが、政府は相変わらず健康への心配はないと言っています。周辺地域で癌検診を強化する方針など、今後出してくれるのでしょうか?。

 それから、東日本大震災に関する他の記事で興味深いものがありました。

 毎日新聞が「在宅障害者に支援届かず 所持金もわずか」との記事を報じました。これは知的障害の者を持つ家族が被災して苦労しているという問題を取り上げています。しかし、この問題は障害者に限りません。健常者も同じ苦しみを味わう可能性があります。

 在宅避難に対する支援が不十分なのは、日本の防災対策の欠陥です。避難所に非難した人には支援物資が提供されるけども、在宅避難者には物資を提供しないことになっています。避難所によっては、地域が合同で自宅避難している場合に物資を提供しているところがあるようですが、完全に個人で自宅避難している場合、「勝手にやってください」となる場合が多いのです。実際、この震災では、老人が自宅から動けず、玄関に「助けて下さい」と張り紙をして、あとで救出された例があります。

 この問題は国民保護法(武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律)においても言えます。核攻撃があった場合、国は放射線の強さに応じて避難を指示することになります。ところが、核攻撃に備えて自宅に核シェルターを造り、その中に避難している人は、あえて避難するよりは、そのままシェルターに留まった方が被曝量を減らせることになります。しかし、避難地域が指定されると、住民は避難しなければなりません。核攻撃は実行されるまで、どこに攻撃があるかは分かりません。つまり、避難命令が出るのは、核爆弾が爆発した後に、被害評価を行ったあとです。自宅に核シェルターを設けるのは核攻撃に対する有効な対策ですが、法律はそれをまったく評価していないのです。

 この辺の行政の特徴を知っていないと、被災したとき、有事の際に、誰もが適切な行政サービスを受けられずに終わる危険があります。

 それから、海江田万里経済産業大臣が消防庁に、原発への放水をしなければ処分すると言ったという件について、海江田大臣は原子力安全・保安院に対して言ったことで、消防庁に対しては何も言っていないと主張しているとの記事を読みました。経済被害対応本部の本部長に海江田大臣が選ばれたことからも、彼が越権行為をしたわけではないことが窺えます。石原都知事が何を根拠に海江田大臣を批判したのかを聞いてみたいところです。



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