タリバンが春の攻勢をやらない?

2011.4.19


 military.comによれば、アフガニスタンのタリバンは春の攻勢の時期を迎えています。しかし、今年は様子が違うようです。

 記事から興味深いところを選んで紹介します。

 NATO軍によれば、2月8日~4月8日まで、特殊作戦部隊は1,380回以上の作戦を行い、約430人の武装勢力の指揮官を殺害、拘束しました。さらに、別の武装勢力2,030人を拘束し、約500人を殺害しました。

 「彼らの能力は昨年、大幅に減少させられましたが、本当の試練は春の攻勢、春の最初の3ヵ月にあるでしょう」と、アブドル・ラヒム・ワルダク国防大臣(Defense Minister Abdul Rahim Wardak)は言いました。この地域のタリバンの攻撃をアフガン軍が簡単に阻止できたら、今年は武装勢力がより弱いことを示します、と彼は言いました。ワルダク大臣は、3月末に彼らが小さな遠隔地を蹂躙したヌリスタン州(Nuristan)での最近の攻撃を機に乗じたものと説明しました。彼は、それはタリバンの戦力について何も語らないけど、一定のプロパガンダになったと言いました。「彼らが急襲部隊の襲撃と組み合わせた自爆攻撃に多く依存するなら、それは彼らが弱いことを意味します」。過去のタリバンは大勢で激戦を行いましたが、いまはより多くの連合軍とずっと多く、装備のよいアフガン軍に対面しています。

 これは、タリバンが戦術を変え、いわゆるソフト・ターゲットに対する低コストの自爆攻撃に頼るという理論を強めています。

 先週、ホワイトハウスの四半期の議会報告書は、最近の目立った自爆攻撃の増加は、この傾向がより弱い政府、アフガン軍、民間人の目標に対するタリバンの戦術のシフトを反映しているかもしれないと言いました。また、タリバン指導者は戦略と資源に自信を持ったままで、春には激戦が予想されると警告しました。

 タリバンは南部と東部ですでに予行演習を行っているという強い兆候があります。ヘルマンド州(Helmand)で、彼らは報告される恐れなしに移動できるように、携帯電話会社4社に、800,000台以上の携帯電話を遮断するよう命じました。

 土曜日、タリバンは2011年の春を「輝ける希望の季節」と呼びました。彼らは全土で米軍と仏軍に対する軍事的勝利を宣言し、アフガンの治安関係高官の暗殺を自賛しました。

 タリバンはアメリカの無条件降伏という彼らの要請を繰り返し、最近の武装勢力の成功に結びつけられる外国部隊の撤退は西欧の敗北の兆候だと主張しました。

 しかし、ISAFは春の攻勢を待っていません。

 「タリバンの春の攻勢はないでしょう」とデビッド・ペトラエス大将(Gen. David Petraeus)は言いました。「ISAFとアフガン軍の攻勢はあるでしょう」。

 4月はじめの、クナール州(Kunar province)での650人のアフガン軍と米軍の合同作戦は、山岳地に隠れ家を作ろうとする武装勢力を狙いました。80人間以上の武装勢力を殺害し、米兵6人が死亡しました。

 「我々の攻勢は始まっており、大麻の季節のあとには本格化していると思いますが、我々はそれを待ちません」と、NATO軍ジョン・ドリアン中佐(Lt. Col. John Dorrian)は言いました。「この作戦は我々の攻勢です。我々は待つつもりはありません。彼らが準備しているとき、我々は彼らを追いかけているでしょう」。


 リビア動乱と原発事故で、アフガン情勢から遠ざかっていましたが、かなりの進展があったという印象です。この報道の後、軍服姿の武装勢力がアフガン国防省内で自爆攻撃を試みて失敗し、射殺されるという事件が報じられました(記事はこちら)。まさに、この記事が報じた内容が継続しているわけです。

 2~4月に、かなりの戦果があり、NATO軍が攻勢をかける予定とは、以前とは状況が随分違います。こうした戦況の好転を実感するのは久し振りです。

 早速ですが、何が原因かを知りたいと思いますが、目下のところ、手がかりを見つけられていません。

 NATO軍とアフガン軍の当面の目標だったカンダハル攻略はどうなったのでしょうか?。未だにタリバンを追い出したという話は聞きません。最近、カンダハル州では自爆犯が州の警察本部長を殺害しています。テロは収まっていませんが、統治には成功したのでしょうか?。2〜4月に大勢のタリバンを殺害・拘束したのなら、かなりの前進があったはずです。私の見落としかも知れませんが、それらしい話を記憶していません。

 これから3ヶ月の戦況を見て判断するしかないのかも知れません。

 しかし、これは撤退を開始する米軍やオバマ政権にとっては格好の材料です。オバマ大統領がアフガンに赴いて、米軍の功績を讃え、批判されることなく撤退できるからです。公約を実行することが政治家の役目ですから、このことは成果として米国民に報告できます。大統領には再選に対する強みとなります。その辺の政治的なセレモニーは、今後、何度も見られることでしょう。

 今後は、アフガン情勢に対する注目も強化していきます。



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