グアム基地の原潜2隻が津波で漂流
グアム海軍基地で、原潜のヒューストン(USS Houston)とシティ・オブ・コーパス・クリスティ(USS City of Corpus Christi)が3月11日の津波に流されたという珍事があったと報じられました。
どんな状況でこの事件が起きたのかが気になり、調べてみました。
米海軍は3月11日に、この事件を発表していました(米海軍の発表はこちら)。しかし、事故の状況は新しい情報はありませんでした。
東日本大震災があった日、グアムには津波警報が出されました。
ロイター通信によると、ウェーク島、ミッドウェー島、グアム島に近い深海用検潮器では通常の海面レベルから最大6フィート(2m)あがるのが観測されました。(記事はこちら)
navytimes.comによると、ハワイには50cmの津波が押し寄せましたが、寄港中の航空母艦アブラハム・リンカーン(Abraham Lincoln)に被害はありませんでした。
pacificnewscenter.comの記事によると、グアムには連続する6波の津波が押し寄せました。ヒューストンとシティ・オブ・コーパス・クリスティは、グアム海軍基地のアルファ埠頭(Alpha wharf)に繋留されていました。
国立地球物理データ・センターの津波マップを見ると、1〜3mの津波が地震後の3時間と少し後にグアム付近を通過したことが分かります。(マップはこちら)
津波は深度が浅くなると速度は落ちますが、波の高さを増し、その威力を増大させます。globalsecurity.orgの解説によると、アプラ湾の入り口は幅457m、深さ30.5m以上です。港の外の深度は30.5mを越えるところが増えます。
気になるのは原潜が係留されていたアルファ埠頭の位置です。アルファ埠頭は内湾の入り口付近にあります(kmzファイルはこちら)。この基地では原潜は常にここに繋留されます。Google Earthで見ると、実際に原潜が繋留されているのが見えます。下の写真を参考にして下さい。
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この内湾の入り口部分は最大吃水が9.8mの艦船に限られます。深度は不明ですが、K埠頭の深度が13.7~15.2mですから、同じか少し浅いくらいと考えるべきでしょう。
意外にも湾の奥で事故が起きたのです。三陸沖で発生した津波は、アプラ湾の入り口に北北西から入ってきます。K埠頭がある南岸に沿って奥へ向かい、浅瀬に入ったことで威力を増しました。そして、内湾の入り口の複雑な地形が影響して、原潜に強い力を与えたのかも知れません。
調査中にグアムの沿岸警備隊は全艦船を沖合へ出すように助言を受けたという記事も見ました。つまり、海軍も同じ助言を受けていたと考えられます。しかし、原潜をすぐに発進させることはできず、被害を受けたのです。
津波マップは海溝沿いに素早く津波が移動したことを示しています。三陸沖の日本海溝付近の海底断層が生んだ津波は、海溝に沿って南下し、より早い速度でグアムへ進んだのです。アプラ湾に入った津波は浅瀬で威力を増し、湾の奥に至るまでに強力になったのかも知れません。しかし、他の水上艦に被害はなかったのですから、それらはいなかったのか、潜水艦は波の影響を受けやすいということなのでしょうか。あるいは移動する準備中に波に襲われたのかも知れません。
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