ミスラタ市街戦の最新情報
2011.4.21
追加 2011.4.22 6:37
BBCによると、イギリスに続いてフランスとイタリアが将校団をリビアに派遣します。フランスは10人に満たない人数で、イタリアは10人と見込まれています。
国連はカダフィ軍がミスラタでクラスター弾を用いたと報じられたことは、国際犯罪になり得ると言いました。「クラスター爆弾1発がミスラタ病院から数百メートル足らずで爆発したと報じられ、その他の報道は少なくとも2ヶ所の病院が迫撃砲や狙撃兵に攻撃されたことを示します」と国連人権高等弁務官のナヴィ・ピレイ(Navi Pillay)は声明で言いました。ピレイ弁務官は医療施設を計画的に狙うことは戦争犯罪で、民間人を計画的に狙ったり、見境なく危険にさらすことは、国際人道法の重大な違反になると言いました。「私はリビア当局に、彼ら自身とリビア国民がどんどん泥沼に入り込んでいるという現実にを直視するよう要請します」と彼女は付け加えました。
このあと、ミスラタの迫撃砲攻撃で西欧のジャーナリスト2人が死亡し、2人が負傷し、その1人は重傷になりました。砲撃は最前線の一部を形成するトリポリ通り(Tripoli Street)周辺でありました。
フォトジャーナリストでアカデミー賞にノミネートされた米英両国籍を持つ映画制作者、ティム・ヘザリントン(Tim Hetherington)はミスラタで迫撃砲の攻撃で死亡しました。
街の病院は、水曜日の現時点で6人が殺され、60人が負傷したと言いました。それらの多くは狙撃兵による銃撃でした。ある医師はBBCに、死と血によって彼の同僚たちは疲れ切っていて、国際社会はどこにいると尋ねました。
フランス政府広報官、フランソワ・バロイン(Francois Baroin)は、フランスはリビアに軍隊を派遣する意図はないと再確認しました。しかし、ジェラルド・ロンゲ国防大臣(Gerard Longuet)は、そうした派遣が安保理事会が再考する価値のある現実問題だと言いました。
フランスとイギリスで、リビアの民間人の保護を保証するという国連決議の限界まで推し進めると、リビアの作戦が上限のない関与に転じるという懸念があります。
このコメントはリビアの暫定国家評議会のムスタファ・アブドル・ジャリル(Mustafa Abdul Jalil)がニコラス・サルコジ大統領(President Nicolas Sarkozy)に会った時に出されました。
サルコジ大統領は、反政府派が「戦車でなく、投票箱」でリビアに民主主義を確立すると約束したと言いました。補佐官は大統領が「空爆の増加」を約束したと言いましたが、詳細は言いませんでした。
イタリアのイグナシオ・ラ・ロサ国防大臣(Defence Minister Ignazio La Russa)は、軍事顧問団を送ると言いました。「反政府派が訓練されなければならないという明確な合意があります」。彼は、「占領を除いたすべての必要な手段」を承認する国連決議1973の条文に大きく介入することが必要だと言いました。
イギリスの顧問団は、ベンガジで補給と情報の訓練を提供するでしょう。イギリスのウィリアム・ヘイグ外務大臣(Foreign Secretary William Hague)は、それは国連の命令に合致すると言いました。
反政府派の暫定国家評議会広報官、ムスタファ・ジェラニ(Mustafa Gheirani)は、顧問団の派遣を歓迎すると言いました。「私の理解では、それは管理的な援助で、武器を使うとか、戦場の中でではありません」。
火曜日に、リビアのアブドル・アティ・アル・オベイディ外務大臣(Foreign Minister Abdul Ati al-Obeidi)は、外国の軍人の存在は後退だと言いました。彼は、民主主義、憲法改正、アフリカ連合が提案した、国連監視による選挙の準備を議論するための半年間の停戦を提案しました。
リビア政府はミスラタの市民を守ろうとしており、国際的な支援組織がそこで支援を行っていると言い、人口密集地域に砲撃していることを否定しました。「我々は我が軍、政府、当局の行動を調査するどんな方針をも歓迎します」と広報官、ムーサ・イブラヒム(Moussa Ibrahim)は言いました。
西部のナフサ地域(Nafusa region)反政府派は、週末以降にイフラン(Yifran)がロケット砲、砲弾、対空機銃で攻撃されていると言いました。カラー(Qalaa)とナルト(Nalut)でも衝突が報告されました。
別のBBCの記事はミスラタでの戦況を報じています。(記事はこちら)
この記事には、別枠にミスラタの戦いが行き詰まった3つの理由が書いてあります。
- 街の規模と反政府派の地元に関する知識
- 対立する両者の再補給を受ける能力
- 一貫した戦略の欠如
カダフィ軍は決定的な戦いをする意志か能力がないかも知れません。ミスラタに住むある医師は「反政府派は街への入り口と出口を熟知しており、隠れる方法を知っています」と言いました。「(カダフィ軍は)街の中で動けなくなれば、包囲されて殲滅されることを知っているのです。だから、彼らは戦車で守られた若干の狙撃手を置いているだけなのです」。
最近の進展についての報告が他の報道に合致している、反政府派を支持する医師は、約10日前、狙撃手1人が降伏し、彼は地域で最も高い建物であるタミーン・ビル(Tameen building・「Tameen」は保険の意味・kmzファイルはこちら)内で活動している最高60人の1人であると反政府派に言いました。その数はいまは減少したと考えられており、反政府派は狙撃手の補給ルートを砂を積んだトラックで作った障害物を作って遮断しました。反政府派は、狙撃手たちはカダフィ軍がガレージや刑務所代わりに使っている、道路を下ったところの青物市場(kmzファイルはこちら)に避難しました。
先週、ミスラタを訪問したBBC記者は、カダフィ軍は市の中心部から1km未満の両側に塹壕を掘っていると言いました。そうした部隊は、重火器を使え、一定の基礎的な軍事訓練を受け、東部で直面している補給の問題がなく、敵よりもよりよく装備されています。それでも、兵士のプロ意識は広く疑問視され、その数は制限されています。カダフィ大佐は軍隊を弱いままにして、軍事作戦は彼の息子が指揮する、総計で10,000〜15,000人とみられる少数の旅団が先導してきました。これらはトリポリ、ミスラタ、東部で分割されています。しかし、カダフィ大佐は、彼らが脱走する場合に備え、「断片部隊(crack troops)」が数百人以上で活動するのを望まないといわれています。
この手法は、ミスラタの最前線、トリポリ通りに沿った長距離砲撃と狙撃手の配置の組み合わせに集約されています。この攻撃は何の軍事的進展を生みませんが、街の通常の生活をシャットダウンさせ、物資不足と犠牲者の増加を生みました。
病院の記録は300人以上が殺され、より多数が負傷したことを示します。1,000人以上が殺されたという反政府派の計算は確認されていません。
「Human Rights Watch」やその他の人権団体によると、民間地域でカダフィ軍が使用している兵器は、ロシア製のグラートロケット(The Grad rocket)とスペイン製のクラスター爆弾です。グラートロケットは、濃密で不正確な弾着散布で発射され、現在ほとんどの国で禁止されているクラスター弾は高速の破片と溶けた金属を放出します。「私は彼らが無作為に爆撃していると考え、これは人々を脅していると考えます」と、ミスラタにある支援団体の病院で働く麻酔医、パオロ・グロッソ(Paolo Grosso)は言いました。「彼らには軍事目標がありません。彼らは人々を脅かすためにどこでも爆破します」。
ミスラタから逃げたある女性は、トリポリ通りは「交戦地帯」で、カダフィ大佐の軍隊を虐待で訴えると、国連の人道支援ニュース「アイリン(Irin)」に言いました。「死体が排水路や私が生産物を買った青果市場にあります」「民兵は女性を強姦し、男性を殺戮し、子供たちを殺しました」。
ミスラタの戦況地図はぜひとも見てください(地図はこちら)。どこが反政府派の支配地域かが分かります。いくつかの写真とビデオ映像も見られます。
リビア全体の戦況地図もあります。(地図はこちら)
BBCはクラスター爆弾の証拠を撮影したビデオ映像を報じています。(映像はこちら)
以上は記事の要約です。
イギリスに続いてフランスが顧問団を送ることにしたのは、単なるライバル意識でしょう。国際法を確立したという自負を持つ国が、イギリスに遅れを取ることは許されないというわけです。イタリアはリビアが早く安定し、石油の安定供給を望んでいるので、行動に出ているわけです。英仏の動きは、いわば学生の連れションみたいなもので、感心しません。こうした動きができるのなら、もっと早くに軍事的な分析に基づいて決定をすべきでした。この辺にヨーロッパ人のアフリカを軽視する態度が垣間見えます。しかも、顧問団の任務は空爆をより緊密にするためではなく、後方支援に限られているようです。やる気が見えません。まるで、金持ちが貧民をちょいと支援してやっているのだという感じです。形ばかりの慈善活動です。こんな戦争を今後も続けるのなら、北アフリカだけでなく、世界全体の進歩はないでしょう。
リビアが半年間の停戦を提案しているのは、単なる時間稼ぎなので、耳を貸す必要はありません。
記事が掲げたミスラタ戦のポイントは的確です。そして、目撃者の証言も市街戦の特色をよく表しています。
市街戦は街を区画単位で争奪するという特色があります。市街地は建物が道路で仕切られており、区画を越えて移動するのが難しいのです。無理に道路を横切ろうとすれば狙撃され、狙撃手すべてを無力化するのも困難です。建物は壁を壊して区画内の移動を容易にしたり、地下道や高層ビルを利用することができます。今回、ミスラタの戦況地図が報じられたのは有益でした。タミーン・ビルは、狙撃手が周囲に睨みをきかせるのに有益でしたが、反政府派が周囲を占領したので補給を受けられなくなったのです。狙撃手が降伏したのは補給が切れたからでしょう。
カダフィ軍が最大で15,000人と比較的少なく、全土に分割されていて、指導者自身が大軍での行動を好まない点は有利です。少数の敵が眼前にいるのなら、それらを排除するのは難しくないでしょう。後方にいる別の部隊が前進して、穴埋めをするのを防げるのなら、反政府派は大幅に戦闘をやりやすくなります。事実、カダフィ軍にはミスラタ全域を占領する能力はないのです。
地図はGoogle Earthと合わせて読み取ってください。ミスラタ港付近の占領地帯が少ないのが気になるかも知れませんが、建物がある地域を反政府派はすべて占領していることが分かります。カダフィ軍がここを占領しようとすれば、開墾地を突撃せざるを得ないのです。
記事にはミスラタの反政府派の人数は書いてありません。もし、兵数が足りないのなら、ベンガジ方面から船で増強できます。それが無理なら、空爆を緊密にすることで、反政府派を支援するしかありません。空爆を誘導する能力を持つ将校を派遣し、反政府派の最前線に置いて、反政府派が望む場所を正確に空爆するのです。空港近くのハイウェイまで占領地帯を拡大できれば、ミスラタは大体、反政府派の手に落ちることになります。
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